テクノロジー

2022.10.01 14:30

惑星科学界では今、金星が注目の的


何が変わるのか


一般論として、金星でXバンドを使おうとする人はいない。大気中で大きく強度を損失するからだとヘンズリーはいう。しかし、大気による損失は、Xバンドを使って非常に精度の高い地形図を作ることで元が取れると彼はいう。

その点において、分解能の高いVERITASはマゼランよりずっと有利だ。

考慮すべき分解能には2種類ある、とヘンズリーはいう。わかりやすいのは空間分解能で、地表にあるものを識別する能力を決める。もう1つは放射分析分解能で、地表のグレースケールを測る精細度を決める。これによってデータのコントラストと実体感を高めることができる。

マゼランのレーダー分解能と、VERITASで予測されているものとの違いを示すために、ヘンズリーは大きなハワイ島をマゼランが20キロメートルの分解能で見たときのシミュレーション画像を見せてくれた。それは少々ぼやけた塊のようだった。それに対してVERITASは250メートルの空間分解能で画像を捉えることができる。これはマゼランより2桁高い性能だとヘンズリーはいう。

金星軌道を複数回通過する間に、VERITASは2回の通過から得たデータを組み合わせて地表が動いたかどうかを測定することができる、とヘンズリーはいう。地表の下で火山が膨張して地形を隆起させたかどうかを知ることができる、と彼はいう。



金星が居住可能だったことはあったのか


過去に水が存在していたかどうかを知りたいのだとヘンズリーはいうが、水があったタイミングを決めることは、存在を知るよりはるかに難しい。しかし、テッセラと呼ばれる金星上の大陸のような構造が形成される際に水が関与していたかどうかを見極められることを期待している、と彼はいう。

金星を包む平地に、高さ2~4キロメートルの凹凸を作っているこの大きく変形した地表部分は、この惑星最古の地質単位であると見られている。そこには直径最大2500キロメートルの円形の高原が露出している。このいわゆる「テッセラ地形」は、金星の高原地帯を支配しており、惑星表面のおよそ8%を占めている。

これらの地形は金星で最古の部分であると考えられているため、その地球力学を解読することで、金星の表面と大気両方の進化に関する、数多くの残された空白を埋めることができると研究者たちは考えている。

ミッション完了時のVERITASの主要な成果は


金星と地球という、かつて大きさも組成もよく似ていた惑星が、なぜ互いに大きく異なるものへと進化したのかを理解したいとヘンズリーはいう。それは、発見された太陽系外惑星の岩石惑星への進化に関する大きな意味を持っている

惑星群の表面を直接測定できる実験室は1つしかなく、それはこの太陽系だとヘンズリーはいう。このためこの金星観測は、岩石惑星がどのように進化したかに関する仮説を総合的に検証する重要な機会を提供しているという。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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