しかし、ガソリン配給のマーケティング(あるいは慈善活動)計画を掘り下げているのは、ラッパーだけではない。政治活動委員会から教会、信用組合まで、誰もが自分たちの提供するサービスの組織への認知度を高める方法として、ガソリン価格の高騰を利用しているのだ。シカゴのウィリー・ウィルソン(よく市長候補に挙げられる)のような慈善家は、100万ドル(約1億4200万円)以上のガソリンを無条件で無料にしている。ガソリンの無料提供は善意であり、純粋に1週間分の給油を必要としている人々を手助けすることができる。
一方で、このような提供を批判する人々は、渋滞が大気汚染を引き起こし(何時間も並んでいる車のアイドリングから)、公共交通機関の運行を遅くして弱い立場の人々に害を与える、という。このような批判をする人たちは、給油のために行列に並ぶよりも、ガソリンカードでもらった方が良いという。例えばシカゴでは、ウィルソンが大規模かつ頻繁にガソリンを配給したため、何キロにもわたる交通渋滞が発生した。そのため、地元の人々は今後のガソリンの配給場所と日時を地図に記録し、そのような配給が行われる地域を避けるようになった。
シカゴの歴史家シャーマン・"ディラ"・トーマスは『The Triibe』にこう書いている。「参加したスタンドで無料ガソリンを受け取るために並ぶ場所を探すのに苦労するクルマがあまりに多かったので、市は交通整理のためにシカゴ警察(CPD)の警官を配備しなければなりませんでした。CPDは、まさに無料ガソリンをもらうために並んでいた住民と緊張関係にあると言っても過言ではありません。このような騒ぎは、警察との関係を悪化させかねないし、誰もそんなことは望んでもいないでしょう。もちろん、無料ガソリンを配るためにパトカーを治安のための巡回から外すのは、税金の無駄遣いであることはいうまでもありません」
とはいえ、過去にラッパーが主催した無料提供は、ウィルソンほどの激しさや環境への影響はなかったように見える。メンサの無料提供の様子をFacebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)で見ていると、小規模のガソリン無料提供(約140万円台)では、待ち時間がそれほど長くならないこともあり、コミュニティにとって良い結果につながっているようだ。
ガソリン代の寄付は、困難な財政状況におけるマーケティング手法の1つであり、物価はまだ高いため、冬が近づき、ハリケーンの季節がやってきてもこのような寄付がすぐになくなることはないといってよいだろう。むしろ、増えるかもしれない。都市に住む人たちは、必ずそのために列をなすと私は予想している。
(forbes.com 原文)