男性もなり得る「産後うつ」 予防のためにできること

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産後うつを予防するために


──誰にでも産後うつになるリスクがあるわけですね。産後うつを予防するために、妊娠中から事前準備としてなにかできることはあるのでしょうか?

産後うつになる一番の要因は環境の変化なので、そこに備えて可能な限り環境を整えておくことですよね。子育てはひとりでできるものではありません。なんでも自分でやろうとせず、周囲の人の力を借りて、無理のない環境で子育てができるのがベストです。

パートナーはどれくらい関われるのか、親など身近な人にどれくらい頼れるのか。自治体にどんな支援制度があるのか、民間のサービスにはどんなものがあるのか、それらをどれくらい利用するのか。そういったことを確認したうえで、可能な限り、自分ひとりで子育てしない環境づくりをしておくといいでしょう。

──産後にできることや心がけておいたほうがいいことはありますか?

子どもは思い通りにならないし、すべてを完璧にやろうとしなくていい、ということです。子育ては事業とは違いますから、計画通りにいかないし、思っていたのと違ったと思うことも多々あるでしょう。赤ちゃんも成長していきますから、大変な状況はずっと続くわけではありません。

新しく親になった人にとって、疲れや集中力の低下、不安な気持ちはあって当たり前。環境は大きく変化していますから、これまでと同じようにできなくても、そういうものだと受け止めて、自分を責めないでください。

──子どもはみんなで育てるという意思を持って、周囲の人に頼りながら、産前産後にわたって環境づくりをしていくことが大切ですね。周囲で関わる人として、できることはありますか?

大事なのは、孤立させないこと。話し相手になったり、少しの間赤ちゃんを預かって、子育てから少し離れてゆっくり自分を労わる時間をお母さんに与えてあげられるとよいでしょう。

世界一安全にお産ができる日本で、母体死亡の一番の原因は「自殺」です。国立成育医療センターが発表した妊産婦の死亡に関するデータによれば、産後1年未満の母親の自殺は2015〜16年の2年間で92例。最も多いのが生後7〜9カ月で、「35歳以上」「初産婦」「ひとり親」ほど自殺率が高くなっています。周囲からの十分なサポートが得られず「孤育て」になることが、産後うつによる自殺のリスクを高めてしまうとも言えるんですね。


国立成育医療センター人口動態統計(死亡・出生・死産)から見る妊娠中・産後の死亡の現状
※2015-2016年のデータ。
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文=徳 瑠里香 イラスト=遠藤光太

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