ランセットでこの研究結果を発表したのは、独ポツダム気候影響研究所だ。この研究によると、ツイッター上でのヘイトスピーチは、気温が摂氏41.7~45度の猛暑になると、ヘイトスピーチが最も少ない15~17.8度の適温時と比べて22%増加する。
同研究では、2014年から2020年までのあいだに米国773都市で投稿された40億件を超えるツイートを分析した。その結果、マイナス3.3度からマイナス6.1度という極寒の日にも、ヘイトスピーチのツイートが12.5%と急増することがわかった。ヘイトスピーチが含まれたツイートの割合は、適温時と比較すると、気温が15度より低い日には6%多く、18度より暖かい日には1%多かった。
こうした結果は、宗教や政治的信条、気候帯、所得水準を問わず一貫していたという。
熱波に見舞われたときにヘイトスピーチが増加するのは、気温が高いことで生じる身体的な不快さに加えて、気候変動によって悪化する食料不安や経済情勢といった社会的経済な状況に原因があるのではないかと、研究チームは述べている。
熱波と犯罪率の高さとの関連は、何十年も前から指摘されている。2021年6月に学術誌「Sustainable Cities and Society」で発表された、2007年から2017年までの米主要都市を対象にした研究では、1日の平均気温が5度上昇するごとに、続く8日間に発生する性犯罪が4.5%増えることが明らかになった。
猛暑時には殺人事件が急増することもわかっている。米国立医学図書館のサイトで2020年10月に発表された研究によると、気温が5度上昇するごとに、続く7日間に発生する殺人事件が、シカゴは9.5%、ニューヨークは8.8%増加したという。
このような猛暑と凶悪犯罪の関連性は、オーストラリアやフィンランド、韓国、英国でも報告されている。ロンドン警視庁の2010年から2018年までのデータによると、気温20度以上の日に発生する凶悪犯罪は、10度未満の日と比べて平均で14%多かった。
2021年9月にランセットで発表された研究では、猛暑と凶悪犯罪のつながりについて2つの要因を挙げている。ひとつは、暑さで人々が不快感や不満を抱いたり、衝動的、攻撃的になったりすること。もうひとつは、日常生活に変化が生じて、他人との対立が起きやすくなることだ。