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2022.09.17 17:30

高齢出産でも自然分娩でトラブルなし。 産科医が実践する、母子に優しいお産とは?


知識がなくても成立していた妊娠・出産のしくみ。その原理原則とは?


──妊娠中はどのように過ごしていたのでしょう?
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藤原:日下にずっと言われ続けていたのは、ストレスを溜めないように、とにかくがんばらなくていい、ということ。仕事もセーブして、ぐうたら過ごしていました。

──ぐうたら!


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日下:42歳で高齢出産だし、トラブルを回避するためにもいろいろやらないといけない、と思うでしょ? 足がむくんだら一生懸命歩こうとかスクワットしようとか。でもね、違うんです。がんばらなくていい。あれもしなきゃこれもしなきゃと詰め込んでは自分にプレッシャーをかけてしまいますよね。一番の問題は不安と緊張。つまりストレスです。だから、できる限りストレスを溜めない生活を心がけることが最優先なんです。

もともと妊娠・出産のしくみは、人間が医学的な知識を持つ前から機能していたもの。知識や教養がなくても、大多数が自然の摂理でうまくいってきたはずです。野生動物たちはあたりまえにお産をするでしょう? 証明はできませんが、動物たちは、お腹の中に赤ちゃんがいるとわかって妊娠やお産をやっていないと考えられます。人間の中にも、今でもたまに、出産直前まで妊娠に気がついていない女性がいるんですよ。自分のお腹の中に赤ちゃんがいることは生き物として自動的にわかることではなく、学習しないとわからないことなのです。

そうしたことから、妊娠とお産はもともと、親がお腹の赤ちゃんの存在を知らない状態で営まれてきたしくみで、私たちのように妊娠に気がついてお産をするのは、生き物として極めて特殊なケースと考えられます。そこから導き出される、妊娠とお産の成功の秘訣、根本原則は、できるだけ野生動物の行動をまねることです。具体的な例を出して説明します。

たとえば、つわりはなぜ起きるのでしょうか。医学的には解明されていませんが、進化論的に考えてみましょう。ほかの多くの哺乳動物にも妊娠初期に食欲低下や吐き戻し、活動低下といったつわりのような状態があることは、動物たちに関わる仕事に従事している人たちは経験的に知っています。そして、つわりは赤ちゃんが薬などの悪影響を受けやすい時期に一致しています。妊娠は野生の環境で、かつ、妊娠していることに気がついてなくても大多数がうまく行ってきたしくみです。野生の環境では妊娠初期に食べ物や飲み物を取ること自体が赤ちゃんにとって危険でしょう?

つまり、つわりはもともと、赤ちゃんが有害物質に敏感な妊娠初期に外からの危険を排除するために、吐き戻しや食欲を低下させる。また、母体に貯蔵された安全な栄養を送るために、母体の活動性を抑え具合を悪くして休ませる。つまり、母親が気づいていなくても赤ちゃんを守るしくみだと推測できます。動物は感情に従って動きますから、休むことで、必要なエネルギーを赤ちゃんに供給しているのです。でも、人間は知識と教養をもって、妊娠という事実を知り、どの食べ物や飲み物が赤ちゃんに有害か判断できる。だから進化の過程で必須ではなくなって、つわりがひどい人もいればほとんどない人もいて、個人差が生まれたとも考えられます。


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文=徳 瑠里香 撮影=川島彩水

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