──なるほどー。たとえ、つわりがあっても、人間は仕事や家事、やることが目の前にあると、頭で考えて、身体が動いちゃうこともありますよね。妊娠中、仕事をしたり人に会っているときは大丈夫なのに、帰宅したとたんどっと疲れてソファから起きられなくなることがありました。
日下:そう、動物と違って人間は理性がありますから、無意識のうちに頭で考えて感情を抑えて、無理に行動ができちゃうんです。でも無理をすると、エネルギーを消費した分、反動的にどっと疲れがでたり、なんらかの母子のトラブルにつながってしまう可能性があるんですね。
こうしたことを踏まえて考えてみると、妊娠出産がうまくいく秘訣は、動物に倣って感情に従って行動しつつ、人間としての現実に折り合いをつけながら過ごすこと。我々はどうしても、完全に動物のように働き暮らすことは難しいですからね。それでもできる限り、体と心が求めているときはちゃんと休んだほうがいい。
妊娠中はいつも通りにいかなくて当たり前。がんばらず、ストレスを溜めずに過ごす
──藤原先生は実際に、どんな妊婦生活を送っていたのでしょう? 東洋医学に基づくケアもされていたのでしょうか?
藤原:天使のたまごには毎週通ってケアを受けていました。あとは、ヨガやプールにも通って、自宅でもヨガのポーズを取ったり瞑想をしたり。適度に体を動かして、食べたいものは我慢せずに適度に食べて、規則正しい生活を心がけていましたね。1人目のときはストレスで食べすぎちゃって20kg増加したんですが、今回は、心身の状態が整っていたこともあり適正体重の12kg増におさまりました。糖尿病や高血圧になることもなく、トラブルもなく順調でしたね。
日下:運動しなきゃと言って、無理に疲れるほど動く必要はないんです。心地いいくらいでやめておくのがちょうどいい。妊娠7か月くらいになったら、リラキシンってホルモンが出て胎盤をゆるめ産道の準備をちゃんとしてくれますから、産道を開くために歩かなくても大丈夫。
藤原:1人目のときは、思い通りにいかないことでなんでがんばれないんだろうって自己嫌悪に陥って、それがストレスでした。だから今回は私、妊婦だからぐうたらするね!って宣言して、仕事も家事も堂々と休んでました。妊娠期をポジティブに楽しもうと、マタニティファッションを取り入れたり、旅行に出かけたりも。
日下:妊娠中は、自分の体の中でエネルギーをどこに分配するかが肝になるんです。このことは血液をどこに分配するかとほぼ同じです。でもそれは、私たちも他の動物たちと同じで意図的に分配できない、自動のしくみなのです。妊娠中に頭がぼーっとするのは、赤ちゃんに必要な血液を子宮に送っているから。当然判断力はにぶるし、普段通りにできなくて当たり前なんです。
藤原:赤ちゃんに血液を送っていることを考えたら、ぼーっとしているのも仕方ない。妊娠中に車を運転していて、一方通行の標識を確認しているのに、通行しちゃっておまわりさんに止められたことがあったんです。おまわりさんも「ちゃんと止まってたのにね」って言ってましたけど、思考が回らなくて。自分でもびっくりしましたが、もちろん気をつけつつ、赤ちゃんに血液を送っているからだ、と自分を責めず失敗も許容していました。
日下:妊娠中は、疲れたら休んで、ストレスを減らすために嫌なことはしない。仕事や家事育児は頼れる人に罪悪感を抱かずに頼む。周囲の理解も必要ですが、可能な限り、がんばらずに過ごしてください。