なぜ、ベイビー・ブローカーは韓国で不人気だったのか

「疑似家族」もの2作品、韓国でどう受け止められたか(Photo by Lionel Hahn/Getty Images)(Stockadaily / Shutterstock.com)


ただ、韓国でも疑似家族のストーリーが全く共感を得られないかというと、そんなこともない。今、韓国の若い世代で人気があるのが、日本で爆発的にヒットした漫画「SPY×FAMILY」。スパイの男と殺し屋の女、超能力を持った少女が疑似家族を構成するストーリーだ。
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韓国の30代女性はSPY×FAMILYの大ファンで、「デザインは全く日本を感じさせません。ハラハラドキドキの展開が面白いんです」と話す。

こうしてみると、「ベイビー・ブローカー」に対する韓国人の評価でよく指摘された「日本情緒」が受けない原因だったのかもしれない。先の30代男性は「韓国人は起承転結がはっきりしていて、余り細かく考えないストーリーが好きなんです。できれば、アクションが入っていれば、なお良いんです」と語る。

確かに、韓国では日本でよく売れる推理小説に、あまり人気が集まらない。時刻表を使った殺人など、細かい展開が面倒なのだという。また、アクションも韓国ではリアリズムを追求する。日本人なら敬遠する、血が流れるようなリアルな暴力シーンもどんどん盛り込む。知人の1人は「是枝監督の映画は、淡々としていて、目立ったアクションもありません。それこそ、韓国人から見れば、チルハダ(退屈だ)となるのです」と解説する。
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そして、先に紹介した60代の元国家公務員は「韓日にある考え方の違いは、そのまま今日の関係悪化の原因の一つになっています」と説明する。

例えば、韓国の大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工らへの損害賠償を命じた徴用工問題。日本にしてみれば、1965年の日韓請求権協定で解決した問題であり、「なぜ、蒸し返すのか」ということになる。この判決を認めれば、65年の協定を否定することになり、半世紀以上にわたって積み上げてきた日韓協力の根幹が崩れてしまう。「韓国はこれまで獲得してきた巨額の経済支援を全部ご破算にするんですか」ということになる。でも、韓国人にこの話をすれば、「情がない」ということになる。

もちろん、日本は過去、首相の談話や基金への資金拠出などで散々、情を見せてきたし、「いい加減にしてくれ」ということになる。それでも、韓国政府が最近、徴用工問題を韓国側の基金で解決する方針を示す一方、なお、日本に「呼応」を呼びかけているのは、まさに、この「日韓の考え方や文化の違い」から来ているとも言える。

韓国は10月ごろ、徴用工問題を巡る解決案を日本に提示する見通しだ。同時に、日本に対して最後まで「呼応」を求め続けるだろう。岸田文雄政権がどのように応じるかは、まだわからない。岸田首相と尹錫悦韓国大統領は今月、国連総会の場を利用して、「立ち話」をする見通しだ。

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文=牧野愛博

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