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2022.09.07 17:00

みんなで運営し出資する「DAO」は豊かさを分散する特効薬か


開拓時代から脱却したDAO


16年にイーサリアムのプロジェクトとして始まったDAOは、初期の段階ではその実用性を証明できなかった。その年の4月に、「The DAO(ザ・ダオ)」という名称で実施された第1回目のプロジェクトは、失敗に終わった。スマートコントラクトと呼ばれる技術で、中央の管理者なしに自動的に利益を分配する投資ファンドというアイデアを実証するこのプロジェクトは、すぐさま1億5000万ドルもの資金を集めたが、その直後に資金の3分の1をハッカーに奪われたのだ。

この事件を受けて、イーサリアムの開発者は「ハードフォーク」と呼ばれる施策でブロックチェーンを分岐させ、資金がハッカーの手に渡ることを防いだが、DAOの仕組みに問題があることは広く知られるようになり、当時隆盛を誇ったインターネットの闇市場である「シルクロード」と似たネガティブなイメージで語られるようになった。

それでもなお、DAOの概念は徐々に広まり18年になる頃には、およそ10のDAOが設立され、20年になると、200近くにふくらんだ。同時に、詐欺師がDAOを活用した儲け話で資金を集め、カネをもち逃げする事件も多発した。今年1月にも、ビットコインの保有者がその資産から利息を稼げるようにする「BadgerDAO(バジャーDAO)」というプロジェクトがサイバー攻撃に遭い、1億2000万ドルを奪われている。

しかし、開拓時代の米国西部さながらのDAOの世界にも保安官たちが押し寄せており、今では50以上のセキュリティ企業がこの分野の監視にあたり、プロジェクトの安全性を高めている。統計プラットフォームの「DeepDAO(ディープDAO)」によると、今では世界で4000以上のDAOが設立され、集められた資金の総額は80億ドル以上に達している。

そんななか、昨年はメンバー数1万7000人の「ConstitutionDAO(コンスティテューションDAO)」が、現存する13部のアメリカ合衆国憲法の初版のうちの1部をサザビーズのオークションで落札するために、4700万ドルを調達して話題を集めたように、社会派のテーマを掲げて世間の注目を集めるDAOのプロジェクトも増えている。

1億ドルの資産をもつ「プリーザーDAO」は21年、米国家安全保障局(NSA)の内部告発者として知られるエドワード・スノーデンが制作したNFT作品「Stay Free(自由なままで)」を約550万ドルで落札し、22年3月には、ロシア軍と戦うウクライナ兵を支援するためのDAOの立ち上げを支援した。21年3月に結成されたプリーザーDAOは、米ベンチャー投資会社(VC)のアンドリーセン・ホロウィッツから出資を受けている。

一方、ダイバーシティ(多様性)の欠如が指摘されるテクノロジー業界で、女性やノンバイナリー(性自認が男女の枠に当てはまらない人)の起業家を支援するDAOも現れた。21年5月に発足した「Komorebi Collective(コモレビ・コレクティブ)」は35人の女性投資家が参加し、40万ドルを運用するDAOで、暗号通貨領域のスタートアップを投資対象としている。コモレビ・コレクティブ共同創業者のキンジャル・シャーは、暗号通貨に特化した大手VCのブロックチェーン・キャピタルのパートナーだが、「DAOのほうが、実験的で柔軟な投資が行える」と述べている。

さらに、スポーツ分野では「みんなで資金を出し合い、地元のスポーツチームを買う夢を実現するためのDAO」も存在する。バスケットボールのファンたちが結成した「クラウス・ハウスDAO」は、元選手やスーパーファンを呼び込み、NBAチームの購入運動を展開している。

DAO(分散型自立組織)でどう投資は変わるのか?

FLAMINGO(フラミンゴ)

NFT(非代替性トークン)に特化した投資グループ。創業者は、「Tribute Labs(トリビュート・ラボ)」の共同創業者でCEO(最高経営責任者)のアーロン・ライト。アーティストやゲーム・クリエイターの支援、メタバース・エコシステム(生態系)の構築を目的に立ち上げられた。適格投資家を対象にしており、SEC(米証券取引委員会)の規制に従いメンバー数は100人以下に限定されている。

SEED CLUB(シード・クラブ)

DAOのスタートアップに特化したアクセラレータ。創業者は、ジェス・スロス。参加メンバーには、世界的デザイン企業「IDEO(アイディオ)の協働プラットフォーム「IDEO Colab」のほか、ウェブ3関連のニュースレター「Not Boring(ノット・ボアリング)」創業者のパッキー・マッコーミックなど。“DAO界のYコンビネータ”を目指しており、すでに30以上のプロジェクトを立ち上げている。

TRIBUTE LABS(トリビュート・ラボ)

イーサリアムのブロックチェーンを基盤としたDAOコミュニティを立ち上げる企業。共同創業者兼CEO(最高経営責任者)は、アーロン・ライト。主に、DAO構築のフレームワーク「Tribute DAO Framework」と、法務面の整備を簡単にする「OpenLaw Framework」から成り立つ。メタバースが対象の「ネオンDAO」や、音楽系のNFTに投資する「ノイズDAO」などを傘下にもつ。
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文=ジェフ・カウフリン & イザベル・コントレラス 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=木村理恵 編集=上田裕資

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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