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2022.09.07

みんなで運営し出資する「DAO」は豊かさを分散する特効薬か

投資DAO「トリビュート・ラボ」の アーロン・ライトCEO(最高経営責任者・左)と、プリヤンカ・デサイ COO(最高執行責任者・右)


一方、シリコンバレーでは、シンジケートがDAOを従来と比べてはるかに速いペースで拡大しようとしている。「Web3版の投資クラブ」を謳う同社は、最大99人の投資家がイーサリアムのウォレットを即座にDAOに変換できるサービスを提供し、ブロックチェーン上で決議や保有資産の追跡を可能にしている。標準プランの価格が300ドル未満のこのサービスには、1月末のリリースから1週間足らずで200のDAOが参加した。

しかし、この先、DAOの資産が何兆ドルもの規模にふくらんだ場合、SECが現状のルールを堅持するとは考えにくく、当局はすでに、売買可能なトークンを有価証券と見なしている。さらに、DAOの将来を左右するのが、実際の運用成績だと言えるだろう。

仮に、ブロックチェーン上に集う投資家たちのリターンが、「ゲームストップ」や「AMC」などのミーム株(業績とは無関係に、SNSなどのネット上で人気が出て急激に取引が拡大する銘柄)に振り回された愚かな株式投資家たちと同レベルに留まるのであれば、DAOの人気もあっという間に衰えてしまうだろう。

冒頭で紹介したビアーズタウン・レディースの場合、著書がベストセラーになったせいで運用成績がくわしく調べられるようになると、実際のところ、市場の平均以下のリターンしかあげられていなかったことが露呈している。

しかし前出のフラミンゴの投資家たちは、クリプトパンクだけでなく、類人猿のアイコンで知られる「Bored Ape Yacht Club(BAYC:ボアード・エイプ・ヨット・クラブ)」などの人気のNFTへの投資で、1000万ドルの元手を15カ月で10億ドル近くまで増やすという驚異的リターンをあげている。

フラミンゴに参加するための最低投資額は、当初は2万3000ドルだったが、現在は800万ドル以上に高騰している。しかも、メンバー枠が100人に限定されているため、空き枠がない場合はそもそも加入の申し込みすらできないのだ。

DEMOCRATIZINGINVESTING DAOが投資を“民主化”するか?

「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」は日本語で「分散型自律組織」と呼ばれる、メンバーが共同で所有・管理する組織のこと。ブロックチェーン技術とスマートコントラクト(契約の自動化)で運用されていることから、透明性が高いのが特徴。フラットな組織で、メンバー全員に投票・意思決定の権限がある(左チャート)。高額なものを多くの人で共同購入・投資することを可能にするフレームワークということもあり、DAO参加者が年々増えている(右チャート)。

文=ジェフ・カウフリン & イザベル・コントレラス 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=木村理恵 編集=上田裕資

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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