米フォーブスが選ぶ世界の「ブロックチェーン50社」2022年版

THE BLOCKCHAIN 50

暗号通貨の乱高下が続き、NFT(非代替性トークン)売買の熱狂も一段落したこともあって、「暗号資産の冬」が到来したとの声も少なくない。その一方で、その基盤技術であるブロックチェーンは世界各国の企業にも着実に浸透しつつある。

今年は、日本からも2社が選ばれた2022年版 「ブロックチェーン50」。
小売りから銀行・保険まで、送金、追跡、情報処理、記録といった業務を簡易化、高速化するブロックチェーン技術を活用している世界のトップ企業50社を一挙掲載!


ADOBE アドビ
本社:米カリフォルニア州サンノゼ
ブロックチェーン・プラットフォーム:イーサリアム

アドビは2021年10月、クリエイターが画像をKnownOrigin、OpenSea、Rarible、SuperRareといった人気NFTマーケットプレイスに直接エクスポートできる「Content Attribution」をスタート。クリエイターは自身の情報や編集履歴を作品に埋め込むことで、作品の真正性を示すことができ、非著作権者による勝手な販売の阻止にもつながる。最終的には2000万人のアドビCreative Cloud加入者が利用可能予定。

ALLIANZ アリアンツ
本社:ドイツ・ミュンヘン
ブロックチェーン・プラットフォーム:ハイパーレジャーファブリック、コルダ

年間売上1640億ドルを誇る保険大手のアリアンツは、ブロックチェーンを使用し、ヨーロッパにおける国境を越えた自動車保険請求を合理化。以前は各国別のチームと互換性のないデータベースにより多くの電子メールのやり取りが必要であり、クレームの解決には数カ月を要していた。が、現在では各クレームのログをひとつのソースで管理できるようになり、処理時間は数分に短縮、コストは10%削減された。

BLOCK ブロック
本社:米カリフォルニア州サンフランシスコ
ブロックチェーン・プラットフォーム:ビットコイン

Twitterの共同創業者であるジャック・ドーシーのもうひとつの会社である、米決済大手スクエアが社名変更。21年11月にTwitterを去ったドーシーが同社でブロックチェーンに全振りする。個人が安全にビットコインを売買できる同社のモバイル決済アプリCash Appは、21年の第3四半期のみで4200万ドルの手数料を叩き出した。エネルギー効率の高いビットコインマイニングシステムの構築プロジェクトも進行中。

ANT GROUP アントグループ
本社:中国・杭州
ブロックチェーン・プラットフォーム:アントチェーン

1万人のブロックチェーン専従開発者を擁し、これまで30のアプリを開発。特許や伝票などブロックチェーン管理ドキュメントを1億以上生成している。国際貿易プラットフォームTruspleでは、製品・部品の海外バイヤーと600万人の中国人セラーを結び、税金、税関、配送を簡素化。銀行の監査コストと債務不履行リスクを軽減でき、シティバンク、BNPパリバ、シンガポールのDBSなど、20近いグローバル銀行が採用。

AON エーオン
本社:アイルランド・ダブリン
ブロックチェーン・プラットフォーム:コルダ

保険会社にとって保険の解約は大きな問題だが、多くの場合、顧客による保険料の支払い忘れや支払額不足が解約のきっかけとなる。2021年、保険仲介大手のエーオン(年間売上120億ドル)は、保険大手のチューリッヒと提携し、ブロックチェーン台帳をベースとした請求書の発行をスタート。これまでに解約通知件数は2桁減少しており、今年はさらに10社の取引先を同ブロックチェーンに組み込む予定。

ANDREESSEN HOROWITZ アンドリーセン・ホロウィッツ
本社:米カリフォルニア州メンロパーク
ブロックチェーン・プラットフォーム:ビットコイン、イーサリアム、ソラナ、フロウ、セロ、ニア、アルウィーブなど

世界最大のクリプトインベスター。21年6月にローンチした22億ドルという巨大なCrypto Fund IIIをはじめとし、過去3年で3つのブロックチェーン専用ファンドに約31億ドルをレイズした。評価額340億ドルとなったCoinbaseの初期投資家でもあり、これまで60以上のブロックチェーンスタートアップに出資を行っている。また、SECや米財務省、司法省の元職員を採用することで政策立案に関するロビー活動にも積極的。

ANTHEM アンセム
本社:インディアナ州インディアナポリス
ブロックチェーン・プラットフォーム:ハイパーレジャーファブリック

売上高1370億ドル、米医療保険第2位のアンセムが「コーディネーション・オブ・ベネフィット」と呼ばれる複雑な保険の事務プロセスを高速化するために、ブロックチェーンの導入を進めている。通常、同手続きには一連のFAXと電話でのやりとりが必要であり、処理に3カ月かかることもあったが、ブロックチェーン技術を用いてこれを数分から数時間に短縮。現在、月間3000〜5000件の処理が行われている。

A.P. MOLLER—MAERSK A.P. モラー・マースク
本社:デンマーク・コペンハーゲン
ブロックチェーン・プラットフォーム:トレードレンズ、ハイパーレジャーファブリック

世界第2位の海運コングロマリットであるマースクは、2018年にIBMと共同開発したトレードレンズ(TradeLens)ブロックチェーンを用いて、世界の港を移動するコンテナ追跡の高速化・ペーパーレス化に成功。数時間かかっていた特定のコンテナの追跡が数秒で可能に。これまでの追跡数は5500万件以上。独Hapag-LloydやシンガポールのOcean NetworkExpressなどの海運大手も採用。

BAIDU 百度(バイドゥ)
本社:中国・北京
ブロックチェーン・プラットフォーム:スーパーチェーン

中国第4位のテック企業である百度では、2万人の開発者が独自のオープンソースブロックチェーンで金融アプリを開発。21年9月に上海の南西にある繊維都市・桐郷の政府と結んだ2500万ドルの契約では、50億ドル規模の衣料用繊維のサプライチェーンを追跡するソフトを構築。同社はブロックチェーンにより、サプライチェーンのエネルギー消費量を17%削減し、毎年1万5000トンのCO2を削減できると試算する。

FTX
本社:バハマ ・ナッソー
ブロックチェーン・プラットフォーム:ビットコイン、イーサリアム、ソラナ、ほか多数

月間取引額3.4兆ドルの暗号デリバティブ市場において約10%を扱う取引所大手。世界で最も裕福な暗号長者(純資産265億ドル)である29歳が率いる。FTXの取り分は平均0.02%であり、これによってほぼ無リスクで月間7.5億ドルを売り上げ、3.5億ドルの利益を得ている。21年に15億ドルを調達し、評価額は12億ドルから250億ドルに。知名度獲得のため大谷翔平ら多くの著名人と契約。

BREITLING ブライトリング
本社:スイス・グレンへン
ブロックチェーン・プラットフォーム:イーサリアム

高級時計メーカーであるブライトリングは現在、32万個の時計をブロックチェーン上で追跡しており、顧客は簡単に詳細な製品履歴と真贋証明にアクセスできる。同社は再販市場にも積極的で、顧客はデジタルウォレットを通じ、手持ちの時計を売りたいときは即座に査定が受けられ、中古品を買いたいときは過去の所有者数や修理履歴をチェックできる。今後同社は、盗難や紛失時の保証にも同技術を活用予定。

BHP ビー・エイチ・ピー
本社:オーストラリア・メルボルン
ブロックチェーン・プラットフォーム:マインハブ、ハイパーレジャーファブリック

多国籍鉱業企業BHPは20年、中国向けオーストラリア鉄鉱石輸出における初の「ペーパーレス」出荷をスタート。すべての書類、成分分析、排出データをマインハブ(MineHub)で記録。また、ブロックチェーンベースのトレーサビリティシステムを導入し、テスラ上海のバッテリー工場に販売するニッケルに希釈がないことを証明したり、チリから米ジョージア州に銅を送る際の炭素排出量の追跡などに活用。
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編集=マイケル・デル・カスティージョ / マット・シフリン 調査=マリア・アブルー、ニナ・バンビシェバ、ジャスティン・バーンバウム、ローレン・デター、マイケル・デル・カスティージョ、スティーブン・エルリック、クリス・ヘルマン、ケイティ・ジェニングズ、ジェフ・カウフリン、ハビエル・パズ、ジョン・ポンチアーノ、マリー・シュルト・ボックム イラストレーション=ルイーズ・ポメロイ

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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