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2022.09.05

オラフ・カールソン=ウィー、ICOの申し子がDeFiの金脈をつかむまで

オラフ・カールソン=ウィー(33)


メーカーダオを運営する財団は、一時はプラットフォームの緊急停止も検討した。メーカーダオが破たんしなかった理由のひとつは、イーサの価格が数カ月で80%持ち直したことにある。

しかし現在、リスクはさらに増大している。20年3月にDeFiプラットフォームに「ロック」されていたデジタル資産の価値は約100億ドルだったが、今日では(先ごろの調整局面を経た後でも)リスクにさらされている資産は800億ドル近くある。マサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン上院議員のような、強力な反対派たちがDeFiを「クリプトの最も危険な部分」と称するのも無理はない。

「分散」は幻想か? 集中支配される分散型金融


そして、分散型金融という新しい世界が民主主義であるとするなら、カールソンはいわば、「ボス政治」(民主主義下にありながらその実、ごく少数の人間が利権を差配する構造)でいうところの「ボス」だ。

例えばコンパウンドの運営管理体制を見ると、ポリチェーンはアンドリーセン・ホロウィッツに次ぐ2番目に強い議決権をもつ勢力で、280万の議決権のうちの30万6000、つまり約11%を握っている。アンドリーセンの議決権の数は32万1000だ。貸し付けの担保要件の引き下げといった重要な決議であっても、議決に必要な投票数はわずか40万票であるため、このふたつのVCが合意さえすれば、簡単に自分たちの望み通りに決議を動かせる。実際、最大規模の分散型プラットフォームの多くが、舞台裏で一握りの大手ヘッジファンドやVCに支配されている。ポリチェーンもそのひとつだ。普通株の議決権とは異なり、トークン保有者に対する決議の通知は義務化されておらず、DeFiトークンをコインベースのような取引所に保管している場合は、議決権の行使を可能にする仕組みすらない。

ポリチェーンがすべての重要提案において創業者たちと話し合っていると率直に認めたうえでカールソンは、DeFiに内在するこの矛盾にはこだわりたくないという。

「分散化が最終目標やユーザーが求める機能だと思ったことはあまりない。みんなが本当に求めているのはセキュリティの保証だよ。そのためには、通常は分散化が最善の手段だというだけだ」

超速で進むクリプトの世界では、DeFiバブルもすでに過去。カールソンが次にサーフする波は、NFTとメタバースだ。カールソンは青い瞳を輝かせる。

「ネット世代にとっては、アバターやプロフィール写真のほうが洋服や車より大事。ライフスタイルがデジタルに、そしていずれは完全なネットネイティブのメタバースに移行するにつれて、僕らの周りはNFTアイテムであふれることになる」

文=スティーブン・エルリック 写真=グエリン・ブラスク 翻訳=木村理恵 編集=杉岡 藍

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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