2017年、暗号通貨バブルの申し子としてフォーブスの表紙を飾ってから4年半。その後のDeFiブームを牽引し、ブロックチェーン投資の王者となったオラフ・カールソン=ウィー(33)が、マンハッタンのソーホーにある自身の1000万ドルのロフトから、フォーブスの長いズーム取材に応じた。
17年当時、何百ものICO(新規暗号資産公開)がもたらした投機熱は、暗号通貨市場の時価を1000億ドル以上に押し上げた。ホワイトペーパーとコードのほかに大して裏付けのない“ジャンクトークン”の価格を、強欲な有象無象たちが競り上げていたからだ。
そこに現れたのが当時27歳のカールソンだ。暗号通貨取引最大手「コインベース(Coinbase)」に創業直後から3年勤めたという経歴は信頼に足るものだった。彼が16年にサンフランシスコで立ち上げた暗号通貨ヘッジファンド「ポリチェーンキャピタル(Polychain Capital)」は、アンドリーセン・ホロウィッツやユニオン・スクエア・ベンチャーズ、セコイア・キャピタルから出資を得、一気に2億ドルまで膨らんだ。
今日、暗号通貨市場の時価総額は2兆ドルをつけ、ポリチェーンの運用額は50億ドルに達している。ファンド設立時に比して12万5000%増という驚異的な数字だ。カールソンはつい最近、同社の第3号ファンドで7億5000万ドルを調達。「関心は非常に高かった。調達額を何億ドルも上回る需要があったよ」と、カールソンは誇らしげに言う。
カールソンの保有資産はいまや推定6億ドルに上るが、彼が初期に手がけた投資のなかで最も利益を上げたのは、イーサの大量取得だ。イーサはイーサリアムのプラットホーム内で使われるトークンで、現在の価格は2700ドルだが、ポリチェーンが全面的に買いに出た16年当時は12ドル未満で取引されていた。
カールソンが成功した理由のひとつは、まず単純に、人より一足早かったことだ。イーサリアムの創業者であるヴィタリック・ブテリンと出会ったのも、ブテリンがイーサリアムのホワイトペーパーを書く直前、コインベースで短期間働いていたときのことだった。カールソンは18年には、ベルリンで開かれたWeb3の会議でマサチューセッツ工科大学のリサーチサイエンティストであるハリー・ハルピンに会っている。ハリーは極めて高度なプライバシー保護を実現するプロトコル「ニム(Nym)」の共同開発者だ。従来のVCはニムへの投資に消極的で、ハルピンは歯がゆい思いをしていたという。そこへ、 「しゃれた身なりの青年がやってきて言ったんです。『現状を打ち壊すような技術に、僕たちポリチェーンは出資したいんです』と」。ポリチェーンは昨年7月、ニムの650万ドルの資金調達ラウンドを主導した。