パリ発の無料エンジニア養成機関「42」校長、「IT教育が自信に」

「42Paris」校長のソフィー・ビジェ


──世界全体でまだコロナ禍の影響が続く中、どのようにして「42Tokyo」を設立当初の理念の下で運営していくのか、何か特別な秘策はあるのでしょうか?

デジタルに限らず、全ての仕事や学習には効率性が要求されます。そして、この効率性はやはり皆が一堂に会して、共に一つの目標に向かって学習あるいは仕事をするという環境から生まれてくる場合が多い、あるいは多かったのだと思います。

今はリモートで仕事をする人たちの数も徐々に増えてきていますが、一人で作業をしているとやはり不安になることもたくさんあります。特に「42」は答えの見えない課題を周囲の人たちと一緒に解決し、学び、成長することを楽しむことができる人たちにとって最高の学びの場で、教科書や授業はなく、様々な課題をインターネットで調べたり、他の学生たちと協力して解くという問題解決型学習を実践しています。だからこそ、リモートかどうかに関わらず、今こそ、そして今だからこそ、全ての人たちがより効率的に学ぼうとする厳しい自己管理能力が問われているのだと思います。



──卒業後の生徒の進路については、どのような傾向がみられるのでしょうか?

ITを学び、IT関連の知識を手に入れたからと言って、必ずしもプログラマーになるという訳ではなく、「42」は仕事をする場所や国の選択の幅を広げる画期的なツールを与えてくれます。「42」で学ぶということはただ単なる目的ではなく、自分が望む人生の可能性を追求する重要な鍵を手に入れるということなのです。

──現在日本では小学校教育から「プログラミング」の授業が含まれています。これから先もプログラミングスキルの重要性は益々大きくなってくるのではないかと思いますが、その点についてはどのようにお考えですか?

日本は最先端の教育をしていると思います。残念ながらフランスではまだそのような教育システムが取り入れられていませんし、TikTokのようなものには精通しているけれど、インターネットの活用法を知らない若者がまだたくさんいるのが現状で、これから先は物事をロジカルに捉えるデジタル活用能力の必要性が益々問われてくることになると思います。

技術が進化するのは素晴らしいことで、これから先もデジタルの世界は進化し続けていくと思いますが、でもツールが進化しても人間が変わることはないわけです。ですから、何よりも大切なことはプログラミングスキルを身に付けることにより「社会はどのように変化していくべきか」さらに「より良い社会をつくるためには何が必要か」などについて深く考え、その考えを実践する能力を養うことではないかと思っています。
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文=賀陽輝代 インタビュー・編集=谷本有香 写真=藤井さおり

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