パリ発の無料エンジニア養成機関「42」校長、「IT教育が自信に」

「42Paris」校長のソフィー・ビジェ


──「42」で学ぶ男女の比率はどのようになっているのでしょうか?

それが意外にも1980年代はPCを含めて、新しいテクノロジーを習得しようとする女性の数は結構多かったんです。でも、何よりも一番大きな問題は、女性は社会のコミュニティー活動に専念し、イノベーションを生み出すのは男性の役割というような、いわゆるステレオタイプ的な社会通念があることだと思っています。

テクノロジーは特に限られた分野に存在しているわけではありません。そしてジェンダーに縛られず、全ての人が学ぶ機会を持つべきだと思います。デジタルが進化することによって、デジタルの知識がないと昇進が難しいというような概念が生まれる傾向もあります。私たちは、そういった社会の不平等を解消したいと思っています。

「42Paris」はその解決のためには教育が最も大切という概念に基づき、様々な試行錯誤と努力を重ねてきました。その結果、現在「42Paris」では、全体の3分の1が女性で占められているというところまできています。昇進や面白いことに挑戦するチャンス、給料の格差を含めて、女性がデジタル化の分野に参入できないことは女性にとってだけでなく、社会的にも大きな損失に繋がるのではないかと思います。

なぜなら一部の人たちだけが人類の未来を考えて進化を追求しようとすると、そこには脆弱な社会しか見えてこないからです。でも、ここで勘違いしてほしくないのは、ITやインターネットは単なるツールであって問題の原因ではありません。ですから逆にデジタル化がすすめことによって、格差を含めて様々な問題の改善に繋がれば良いと思っていますし、それが「42」の信念でもあるわけです。



格差関係なく、全ての人たちにチャンスを


──日本は職場での男女の格差が大きいと言われ続けてきていますが、だからこそ、より多くの女性たちに「42」で学んで欲しいと思っています。日本とフランスでは社会の構成や女性たちの考えも異なりますが、ソフィーさんの視点から日本の女性たちに伝えたいアドバイスはあるでしょうか?

確かに、文化的な背景が異なりますので、ここで私が日本社会に於ける男女の格差を埋める完ぺきな方法について発言することは難しいことだと思います。でも、第一段階として、小学校からITを学ぶ機会を手にすることは、自分に自信を持つことにも繋がり、とても素晴らしい教育だと思います。

私自身、大学では生物学と音楽を勉強し、IT関係の勉強は全くしていませんでしたが、社会人になって新たにITを学ぶことによって、また違った分野での自信を身につけることができるようになりました。つまり何よりも大切なのは、それが何であれ、まずは自分に自信を持つことだと思います。誰かからの支援を待つだけではなく、これがチャンスだと思ったらそれを掴み取ろうとする姿勢が必要ではないでしょうか?

「42」は年齢や性別を含めた格差に関係なく、挑戦してみたいと思う全ての人たちにチャンスを与える無料の教育機関です。是非この機会を利用して新しい飛躍のチャンスを手にして欲しいと思っています。
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文=賀陽輝代 インタビュー・編集=谷本有香 写真=藤井さおり

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