会員制クリニックの院長が考えるヘルスリテラシーと医療の未来

会員制クリニック「9ru」の塚田紀理院長(左)とUrban Cabin Institute パートナー山田理絵(右)


山田:会員には具体的にどういう方がいらっしゃるのですか?

塚田:芸能人や投資家、経営者が多いです。経営者は、従業員を守っていくために自分が健康でいたいと考えています。どうしても頑張りすぎてしまって、脳梗塞や心筋梗塞になって倒れる方が50代、60代に非常に多いです。パーキンソン病やアトピー性皮膚炎、脳梗塞後の後遺症など、既存の医療サービスで思った方向に持っていけていない患者さんもいます。

山田:そういう方は、どのようにクリニックを利用しているんですか。

塚田:毎月通われる方が多いです。この4月から人間ドックをスタートしましたが、画像や採血では異常が見当たらないけれど不安だという方、病気にならない身体をつくりたいという方の相談を受けます。より健康に、というニーズに応えるのは、アウトカムが分からないので難しいんですが、再生医療やサプリメントはこの数年で色々なものが開発されていて、それらを利用して変化を実感する方は増えています。



山田:ペニンシュラは外国人の宿泊者が多いですが、インバウンド客もいらっしゃいますか?

塚田:ホテルやインバウンドのエージェントを通じて、コロナ前は特に自己幹細胞や幹細胞培養上清液などの再生医療やアンチエイジング、人間ドックを受けたいという中国人や東南アジアの富裕層が多かったです。中国の医療設備や技術は日本より良かったりもするのですが、中国の方々は自国のことをあまり信用していなくて、日本で受けたいと望まれます。

日本の医療教育、技術の緻密さ、手先の器用さ、ホスピタリティは世界のどの国よりもすごいですし、医療従事者の頑張りがやっぱり素晴らしい。すごく親身になってくれると言われます。



山田:それは尊いですね。治療や検査で何か見つかって長期滞在になるというような方もいますよね。コロナ禍では海外の患者さんはどうされているんですか?

塚田:東南アジアの医師と協力して、セカンドオピニオンや情報を提供するDoctor to Doctor to Patientというオンラインの医療相談をしています。

アジアのお金持ちは、自分のヘルススケアに対する意識が非常に高く、惜しまずお金を払いますが、日本はそういう考えが少し薄い。ヘルスケアへの意識がもう少し高まれば、国の医療費を抑える方向に行くでしょう。

山田:具体的には、どんなことをしたらいいでしょう。

塚田:近々の課題は糖尿病です。インスリンなどさまざまな薬が開発されていますが、それらの服用により腎臓が悪くなるスピードが早まって、透析が必要になるんです。そして、その費用は全て保険、つまり税金で賄われます。

国では10年近く前から糖尿病の重症化予防プログラムをやっていますが、顕在化していません。日本にはおいしいものが多すぎて、出前も便利でコンビニも近いので、皆さんパクパク食べてしまう。加えて、車社会やECの発達で歩かない。都会のサラリーマンが1日7800歩数えるのに対し、田舎では3000歩ほど。医者の数も少ないのでなかなか相談ができず、地方に糖尿病患者が特に多いんです。
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文=山田理絵

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