会員制クリニックの院長が考えるヘルスリテラシーと医療の未来

会員制クリニック「9ru」の塚田紀理院長(左)とUrban Cabin Institute パートナー山田理絵(右)

健康と医療は切実なテーマだ。健康に生きたい、苦しまずに終末を迎えたいというのは、誰しもが持つ根源的な欲求でもある。

アート、旅、食などライフスタイル全般において「体験しうる最高のもの」を求めるハイエンド層は、このトピックについてどのように向き合っているのか。ハイエンド・ブランディング・プロデューサーの山田理絵が、鎌倉にある「BLACK CUBE」にハイエンドな価値を提供しているトッププレイヤーを迎え、ビジネスの高付加価値化のヒントを聞き出す対談連載

第8回は、外科医を経てペニンシュラホテル内に会員制クリニック「9ru」を運営する塚田紀理氏に、ヘルスリテラシーの高め方や進化し続ける医療の未来について聞いた(このトークの対談全編はこちら)


山田:同じ鎌倉にお住まいですね。

塚田:家が長谷の海の目の前なので、今日も6時半からサーフィンをしてきました。医療従事者は、ときに命を預かるなど緊張する場面が多いので、リラックスが必要で、海で浄化してから応診するサイクルが今の自分には合っています。昔は忙しくて、こんなことできませんでしたが。



山田:2021年にペニンシュラホテルの中に会員制クリニックを開業されましたが、どのような経緯で始められたのですか?

塚田:外科医としてがんの手術などを10年間やってきましたが、30代後半に交通事故で右手の機能を失い、もう人を助ける手ではなくなってしまったんです。それで、メスを置いて開業しようと。

たまたま大学病院で芸能人や議員さんを診察することが多く、六本木ヒルズのクリニックではハイエンド層と接していました。SBIメディックが支援する東京国際クリニックや米コロンビア大学の会員制クリニックの立ち上げに参画したこともあり、それらの経験を踏まえて、再生医療と美容内科を融合させた会員制クリニックの開設に至りました。

山田:医療というのは、命を救ったり、身体機能を回復させるだけでなく、より幸せに、豊かに生きるための予防といった側面もありますね。

塚田:日本には素晴らしい保険医療制度があって、病気になったら皆さんが助かるように構築されていますが、近年は「もっと健康な身体づくりをしたい」という方々がすごく増えています。80歳になっても美味しいご飯を食べたいし、ゴルフも旅もしたい。あわよくば、「ピンピンコロリ」、つまり死ぬまでピンピンに元気でいて、コロって死ぬことを望んでいますね。

山田:これからの高齢化社会の大きなテーマですね。会員制と一般のクリニックと大きく違う点は何ですか?

塚田:私たちは、未然に防ぎたい、きれいになりたい、病気になりたくないという人たちに向けて、先制医療、未病医療、予防医療、美容医療を会員制で提供しています。予防や未病は自費診療です。私たちの持っているスキルやコンテンツを提供するために、会員制を敷きました。
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文=山田理絵

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