──実際に施設でバリアフリーを実現する際に、知っておくべきことやポイントなどはありますか?
障がいのある方の声をきちんと聞くのが重要だと思います。当事者の方の意見を聞かずにバリアフリー対応を進めてしまうと、不備な点が生じることがあると事業者の方からお聞きすることがあります。
あるTV番組でインクルーシブデザインについて取り上げていたのを観たのですが、東京大会で新国立競技場を建設する時に、視覚障がい・聴覚障がい・肢体不自由・知的障がいなど異なる障がいのある方々、子育て世代・高齢者の方などと20回以上ミーティングを重ねて、完璧なバリアフリー対応トイレなどの施設を作り上げたそうです。
表面的にハードを整備するのではなく、関係者の意見を丁寧に、そして徹底的に聞き、そうした意見を可能な限り取り入れながら進める必要があることを改めて認識して、すごく共感しました。我々がやらなくてはいけないことは、まさにこれだと。今後、この「心のバリアフリー認定制度」を推進していく上でも、障がいのある方の意見を丁寧に聞いて取り入れながら、方向性を決めていくことが大事なんだと実感しています。
今すぐ始められる「心のバリアフリー」
──認定制度を推進する中で、気づいたことはありますか?
例えば飲食店でも、ハード面でバリアがないお店というのはまだまだ限られていると思います。
ただ、ソフト面でできることはある。例えば車いすの方が来られた時に、段差があるならみんなで車いすを持って運んであげるとか、移動型スロープを用意するとか、人の手できちんと行き届いたサービスをする。それこそが心のバリアフリーだと思うんです。
設備のバリアフリー化が完璧じゃなくても、心のバリアフリー、おもてなしの心がある限り、利用者にもちゃんと受け入れられますし、響く。そういうお店は障がいのある方や関係者の間で、今度行ってみようという輪が広がっていきます。
東京2020パラリンピック女子マラソンの金メダリスト道下美里選手が、練習場所である福岡市内の大濠公園や公園内にあるカフェ「ロイヤルガーデンカフェ」などを訪れ、心のバリアフリーについて語っている
──認定制度のPR動画を製作するにあたり、マラソンの道下美里選手、水泳の木村敬一選手、車いすバスケットボールの鳥海連志選手といったパラアスリートの方々とコラボレーションしましたね。
そうなんですよ。一緒に「心のバリアフリー認定」を取得したお店に行って撮影を行いました。
道下さんの「お互いに心が通じ合っていれば障がいを乗り越えられる」という、彼女の素敵な人柄が表れているような言葉が印象的でしたね。それこそが「心のバリアフリー」なのだと思いながらお聞きしていました。また、木村さんも鳥海さんもとても好青年で、楽しく仕事させていただきました。
ミシュランで星を獲得した和食の名店「分とく山」野﨑洋光総料理長のおもてなしと料理を、東京2020パラリンピック男子100mバタフライ(S11)金メダリストの木村敬一選手が体験