そんな世界の潮流に合わせるように、観光庁では宿泊施設、飲食店などの観光施設を対象とした「心のバリアフリー認定制度」を創設。2021年から認定を開始している。
この認定制度とツーリズムにおけるバリアフリーの最新事情について、観光庁観光産業課の進藤昭洋氏に話を聞いた。
──国内のツーリズム施設のバリアフリー対応は、いつ頃から進んできたのですか?
国内外の社会経済情勢に合わせてバリアフリー法が改正されてきた経緯などがあり、いつ頃からという明確な時期はないのですが、例えば宿泊事業者であれば、2019年から基準が変更となり、「建築する客室数の1%以上」のUDルームの設置が求められています。
また、政府として、更なるバリアフリーを推進していくきっかけとなったのは、2017年の「ユニバーサルデザイン2020行動計画」だと思います。ハード面のバリアを取り除くだけでなく、共生社会の実現に向けて「心のバリアフリー」の推進が重要とされました。
これを受けて2020年12月に創設されたのが「観光施設における心のバリアフリー認定制度」です。認定第1弾を発表した2021年9月時点では認定施設は67軒でしたが、現在は375軒まで増えています。
──東京2020オリンピック・パラリンピック(以下、東京大会)が開催される、ということも大きなきっかけだったのでしょうか?
それはありますね。例えば駅にエレベーターを付けたり、段差をなくして移動しやすいように工事をしたりといったことは、東京大会開催決定前から様々な事業者が進めていましたが、東京大会の開催決定を契機として、バリアフリーへの取り組みが加速したのは間違いありません。
世界各国から様々な障がいのある方々や高齢者を受け入れるに当たって、開催までにハード面・ソフト面の環境を整備する目標を掲げたからこそ実現できた、ということはたくさんあると思います。その結果、現在は世界の先進国と比べても、ハード面のバリアフリー環境はかなり改善していると認識しています。
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「サステナブル・ツーリズム」が世界的なトレンドに
──世界中で「サステナブル」への対応がマストになりつつありますが、観光業界ではどのような広がりを見せているのでしょうか?
現在、世界の主要な観光地で、持続可能性について問われています。仕事柄「サステナブル・ツーリズム」という言葉にも毎日のように接していますが、日本の観光地もサステナブルであることをアピールしていかないと、旅の目的地として、宿として、コンテンツとして、選ばれないという状況になりつつあると思います。
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同時に、ユニバーサルであること、バリアフリーであることも求められている。そういった状況だからこそ、観光庁が率先してユニバーサルツーリズムやバリアフリーの観光施設をPRすることは極めて大事なことだと認識しています。
世界的な潮流を敏感に感じ取っている観光地では、国際的なサステナビリティ認証を取得して、それをアピールポイントとして頑張っているところも増えています。同じようにこの観光庁の「心のバリアフリー認定制度」も、観光地のアピールポイントとして、幅広く広がっていって欲しいですね。