今までの「当たり前」を覆した、その試みとは──?
白杖は白くなくてもいい?
「白杖」は、視覚に障がいのある人が周囲の情報を把握するために使用する棒状の器具のこと。全盲の人が使っているイメージを持たれがちだが、弱視の人が使っていることも多い(視覚障がいのある人でも、白杖を使わない人もいる)。
視覚障がいの当事者にとっては重要なものだが、課題も多かった。2020年一般社団法人PLAYERSが視覚障がいのある人に行ったアンケート調査によると、広く使われている持ち運びに便利な折りたたみ式の白杖は、自転車や人にぶつかって折れたり曲がったりすることが多く、重さやデザインに対する不満の声もあった。
このような白杖のさまざまな課題を、ミズノは自社の持つノウハウによって解決しようという取り組みを始め、誕生したのが「ミズノケーンST」だ。まずは基本的な特徴を紹介しよう。
●軽くて、地面の状況をキャッチしやすい素材と設計
素材には、ミズノのゴルフクラブやテニスラケットなどにも使用されている軽くて丈夫なカーボンを使用。重さはスマートフォンとほぼ同程度と軽量でありながら、しっかりと地面を捉える機能性も実現。さらに持ち手に近い手元側を堅くし、地面の凹凸を感じやすい設計に。
地面と接地する先端部にはティアドロップ型の石突きを採用することで、路上のひっかかりを抑制できる仕様となっている。
●持つことが楽しくなるデザイン
杖の地模様は角度によって見え隠れする三角形が配置され、先端部分は鮮やかなブルーを配している。スポーティーで爽やかな印象を与える。
安心して外出できる、破損時のタクシーサービス付き!
ゴルフクラブなどに使われる素材を使い、デザイン性が高い杖というだけでも十分にこれまでの白杖とは異なり画期的だ。しかし、自社の素材を別の分野に転用するというのは、今までにもあった話。ミズノの開発はそれだけでは終わらなかった。「ミズノケーンST」には、購入後の特別なサービスが付帯しているのだ。
白杖の課題のひとつに、外出先での破損があった。万一白杖が折れたりしてしまうと、視覚に障がいのある人は、場合によっては移動することが困難になってしまう。それを怖れて白杖を使わない、外出を控えるという人もいるそうだ。
そこで「ミズノケーンST」は、東京海上日動火災保険の協力により、外出時に破損してしまった場合に電話で依頼することで、第一交通産業のタクシーが使用者を目的地まで送り届けてくれるというサービスをつけたのだ(配車不可能のエリアもあり。詳しくは公式サイトでご確認を)。これならば、予備に折りたたみの白杖を持つ必要もなく、安心して外出することができる。
2022年3月15日に行われた「ミズノケーンST」プレス発表会