さて、この記事の見出しを読んだ人の中には目を丸くした人がいるかもしれない。「シェパード博士は人種問題のカードを使って気を引こうとしている」と。
気候条件の不均衡な影響については以前フォーブスや学術論文に書いたことがある。最近、The Conversationの記事が気候科学者でありスポーツファンでもある私の目を捉えた。
テキサスA&M大学のジェシカ・マーフリー教授とナターシャ・ブリソン教授は、考えてみれば痛々しいほど明らかなことを強く指摘した。有色人アスリートは猛暑に対して不当なほどに脆弱である。
「猛暑はすでにある不公平を増幅させます。アスリートにとって、猛暑によって環境と気候の不公平さがいっそう拡大される恐れがあります」と2人は述べている。
2021年、米国環境保護庁(EPA)は社会的脆弱性と気候変動に関するレポートを発行した。レポートの中で、社会的脆弱者は次のように定義されている。マイノリティ(ただし私は別の言葉を使用することを推奨している)、貧困線(統計上、生活に必要な物を購入できる最低限の収入を表す指標)を200%以上下回る世帯、高齢者および25歳以上で学歴が高卒未満の人々だ。
同レポートの重要な発見は「4つの社会的弱者のグループを観察した結果、マイノリティは2℃の地球温暖化、あるいは50cmの海面上昇という気候変動における最大レベルの影響を受けると分析結果が予測する地域に住んでいる可能性が極めて高いことがわかった」ことだ。黒人(アフリカ系米国人)については、猛暑のために死亡率の増加が予測される地域に住んでいる可能性が40%もある
この種の研究を深く理解するためには、脆弱性の要素である「曝露」「感受性」および「適応能力」を理解しておく必要がある。
熱波を例に考えてみよう。ジョージア州では、あらゆる個人が熱にさらされる。この中には熱に対して敏感な人もいる。熱に対する適応能力や回復力が高い人たちもいる。つまり、その人たちは適切な空調と医療保険を持っている人たちだ。これら3つの要素の組み合わせによって脆弱性が定義される。地域の中で最も脆弱な人たちは、天候・気候現象によるよりも大きなリスクにさらされている。
黒人あるいはアフリカ系米国人の多くが米国で最も暑い地域に住んでいる (c)US CENSUS
上記の2020年米国国勢調査による地図は、多くの黒人あるいはアフリカ系米国人が米国南部地域に住んでいることを示している。この地域に住む人々は著しい高温を体験している。この主張は、2017年にScienceに掲載された米国南部は気候変動から受ける負の影響が最も大きいとする研究とも一致している。
私たち自身の学術研究結果も、有色人種コミュニティが不当に高いリスクにさらされていることを繰り返し指摘しており、広い意味における熱波と気候変動による都市型ヒートアイランド現象が原因だとしている。