巨大海底火山が船を飲み込む「魔の海域」の恐ろしさ

アリューシャン列島の火山島、ボゴスロフ島(Photo DigitalGlobe via Getty Images via Getty Images)

これはまるで、新米の船乗りを怖がらせるためにベテランの船乗りが語りそうな話だ。アリューシャン列島の火山島、ボゴスロフ島の近海で、奇妙な現象を目撃したと船乗りたちが証言している。島が噴火する直前に海が膨らみ、巨大な水のドームができたというのだ。

この現象のメカニズムは10月14日、科学誌「ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscienc)」に掲載された論文で説明された。

海底の活火山は水蒸気噴火や津波を引き起こす場合があり、船で近づくのは極めて危険だ。研究チームは水中マイクを使って安全な距離から9か月間観察し、70回以上の噴火を記録してきた。噴火の直前には轟音が確認されたが、このサウンドは巨大な泡が形成されてはじけることで生まれることがコンピュータのシミュレーションで解明された。

しかも、この泡の直径は最大500メートルにも及ぶことが判明した。泡は、高温の溶岩がベーリング海の冷たい海水と接触したときにできるものだ。溶岩が一瞬で固まると弾力のある薄いガラスの膜が形成され、その膜に火口から放出される二酸化炭素や二酸化硫黄が溜まると膨らんでいき、いずれ水の重さに耐えられなくなって破裂する。これにより、水蒸気爆発が起こり、巨大な泡が発生する。

このような巨大な泡こそが、過去に発生したミステリアスな船の失踪事件の原因なのかもしれない。1952年9月には日本の「ドラゴン・トライアングル」と呼ばれる魔の海域で、海上保安庁の第5海洋丸が突如、消息を絶った。

一部の人々は、この失踪が超常現象によるものだとしたが、その後の調査で第5海洋丸は海底火山の明神礁を調査していたところ、噴火に巻き込まれ、沈没した可能性が高いことが判明した。

編集=上田裕資

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