資本主義のアップデート、再構築の中心的役割を担い、これからの経済、社会の「新しい主役」となり「ポジティブな未来」をつくる、大企業、スタートアップ、投資家、資本市場など、世界で躍動し拡張している「インパクト・エコシステム」の全容を見ていく。
「コロナ関連死をくい止めるために、クラウドファンディングで1億円を集める」そう目標を掲げたとき、認定NPO法人抱樸の誰もが内心「無謀だ」と思った。
世界中がパンデミックに揺れた2020年4月。コロナ禍の影響で仕事や住まいを失う人に支援付き住宅を持続的に提供する事業は、絶対に必要だという確信はあった。だが、クラウドファンディングに挑戦するのは初めてだ。世の中が混沌としているなか、果たしてどれだけの共感を得ることができるだろうか―。
それから3カ月後。抱樸の緊急支援プロジェクトは1億1000万円超の寄付金と、1万人以上の支援者を集めて幕を閉じた。READYFORに設けられたプロジェクトページには全国からメッセージが寄せられた。抱樸は全国の主要都市にある10団体と連携し、寄付金を使って最終的に183室を確保。22年6月時点で236人が利用している。「1億円という大きな金額とともに、1万人の応援団ができた」(抱樸)
20年以降、クラウドファンディングを通じてこうした社会的インパクトが次々と生まれている。
クラウドファンディングの市場規模が急拡大している。一般社団法人日本クラウドファンディング協会が21年7月にまとめた市場調査報告書によると、20年に国内の購入型クラウドファンディング・プラットフォーム大手7社を通じてプロジェクトの実行者が調達した資金の総額は約501億円で、前年同期比で約3倍だった。
企業単体で見ても、その勢いは顕著だ。CAMPFIREの22年1月末までの累計支援額は約550億円と、過去2年間で3倍近い額になった。READYFORも「支援総額が1000万円を超えるプロジェクトの数は約3倍になり、1億円を超えるプロジェクトも12件生まれた」という。
なぜ、これほどまでに流通額が伸びたのか。もちろん、コロナ禍という特殊な事情はある。東日本大震災などの災害時とは異なり、コロナ禍では人との接触を避ける必要があるため現地でのボランティア活動が難しく、支援の方法が限定された。その状況下において、一般市民が取りうる選択肢のひとつがクラウドファンディングを活用した金銭的な支援だった。