ウクライナからの穀物輸出、再開へ向けた協議と現在の状況

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ロシアによる民間施設への空爆が続くなか、ウクライナは食糧危機を警告している。

黒海を経由したウクライナ産穀物の輸出が滞っている問題を解決すべく、輸出再開に向けた、ウクライナとロシア両軍の代表団などによる協議がトルコのイスタンブールで開催されるなか、ウクライナのドミトロ・クレバ外相は7月13日、AP通信に対して、両国がどのような合意をするにせよ、ロシアが「そうした回廊を尊重」し、ミサイルや海軍によってウクライナの港を攻撃しないと誓約することを保証するものでなければならないと語った。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアの海上封鎖は、ヨーロッパの「パンかご」とも呼ばれるウクライナで飢饉と大量移住を引き起こすと警告している。ロシアの海上封鎖により、ウクライナ国内では穀物2500万トン以上が輸出できない状態にある。

衛星画像を分析したモスクワ・タイムズの報道によれば、ウクライナ耕作地のおよそ22%は、現在ロシアの支配下にあるという。

ウクライナの「グレイン・トレード」が7月11日に出した声明によれば、ウクライナは、ロシアによる攻撃の中心になっている黒海の港街オデーサから14日に「テスト船」を出航させ、輸出を再開・拡大していく計画だという。

ウクライナ穀物協会によれば、2月にロシアによる侵攻が始まる以前には、ウクライナは毎月平均600万トンの穀物を輸出していた。侵攻以降、輸出量は大きく減少し、3月は30万トン、4月は100万トンとなっていた。

今回の協議の2週間前には、ウクライナ軍が、ウクライナによる抵抗の象徴として有名になった黒海の重要な前哨基地ズメイヌイ島(スネーク島)を奪還していた。ロシアは、穀物の輸出再開を「善意のしるし」と称している。

ウクライナ地元紙「キーフ・インディペンデント」が12日に報じたところによれば、ロシアによる侵攻が始まった2月以降ウクライナ国内に滞留していた穀物を運ぶために、ドナウ川沿いと黒海にあるウクライナの港に8隻の輸送船が到着したという。

ゼレンスキー大統領は10日夜、フェイスブック上で日々公開している動画のなかでロシアを「テロ国家」と呼んだ。ショッピングモールが標的になった6月の攻撃をはじめとする、ウクライナ東部で起きた一連の攻撃を受けてのことだ。ショッピングモールに対する攻撃については、「欧州史上、まれに見る傲慢なテロ攻撃」と非難している。

ウクライナ国営通信ウクルインフォルムが11日に公開した動画のなかで、ドネツク州のパブロ・キリレンコ知事が述べたところによれば、住宅地への一連の空爆を受けて、ドネツク州はロシアによる攻撃の激化に備えており、住民のおよそ80%が避難したという。

ドネツク州の集合住宅に対するロシア軍の攻撃による死者数は、11日時点で24人に達している。また、11日にはハルキウ州の住宅地もロシア軍による攻撃を受け、6人が死亡し、少なくとも31人が負傷している。

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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