中道:世の中のラグジュアリーブランドとは異なるイメージになりますか。
生駒:そうですね。「自分たちにとって、ラグジュアリーとは何か」という考えたとき、僕にとってのラグジュアリーとは、「心を満たし、人生を彩るもの」になります。心と体を満たした結果、全てが満ちていくという、自分たちにとってのラグジュアリーの定義を作り、その価値をお客様に感じていただけるかどうか。
一般的な定義や他社の考えを追うより、「僕らの定義に共感いただけるのであれば、ぜひご一緒しませんか」というスタンスの方がいいのではないかと思います。
中道:Clearの考えるラグジュアリーの定義を世界でシェアしていくにあたり、どのような戦略を考えていますか。
生駒:酒蔵や農家をはじめとするサプライチェーン全体に利益が出るビジネスを目指さなければ、スタートアップの意味がないので、僕たちはラグジュアリーブランドだからといって小規模でもいいとは考えておらず、大規模市場への進出を目指しています。そのため、『SAKE HUNDRED』に関しても、アメリカと中国が2大投資エリアになります。
まず、アメリカは巨大輸出先であり、規模も大きく安定的に成長しています。その上、現地にも酒蔵がいくつもあってレベルが高い。一方で中国は香港を含めて成長著しく、1本あたりの単価はアメリカを上回っているほど高級志向も進んでいます。
フランスやイギリスをはじめとするヨーロッパも非常に魅力的な市場ですが、大規模な展開をするにはまだ時間がかかってしまいます。ブランドを確立し、しっかりとした事業を作っていくのであれば、まずアメリカと中国が注力すべき市場だと見ています。
【前編】3年で売上20億円 「高級日本酒」はその魅力をどう伝えたのか?
中道:楽しみですね。日本酒だけでなく、焼酎やクラフトジンまで含めた、日本の酒類業界全体に紐づいていきそうです。
生駒:僕たちとしても、日本の存在感を高めていきたいと考えています。
日本酒の技術力や商品の背景や文脈などは、日本全体に通じることでもあります。今後の人口減少を考えても、大量生産大量販売モデルは成立が難しいため、質での勝負は今後の日本全体の課題でもあります。『SAKE HUNDRED』を通して日本が再評価されれば、お茶や衣類といった他分野でも通じるのではないでしょうか。
中道:この番組を始めたきっかけも、まさにその点になります。日本は海外から見ればもったいないことばかりで、このままでは先行きも暗いまま。この10年間で起こったことと言えば、外国人が日本のアイデアを海外で転用し、日本人がそこに乗っかるということばかり。クールジャパンはその最たる例と言え、なぜ自分たちが長年にわたって培ってきた価値を安売りしなければいけないのか疑問に思ってきました。
なぜそんなことが起こってきたかと言えば、単純に海外に魅力を伝えてこなかっただけなんですよね。日本では言わなくても通じるという美学がありますが、海外では伝えなければ意味がありません。
そのギャップを橋渡しする役目が必要だということで、この番組を通じていろんな方々と対話し、行動していけば日本は変わるのではないかと考えています。今も生駒さんの話を聞いていて、一緒にできることがあればぜひやりたいと思いました。