ビジネス

2022.07.25 08:00

世界、日本、「ポジティブな未来計画」論!インパクト・スタートアップたちの現在と今後

Forbes JAPAN編集部

社会性も事業性も両立する


米良:よい社会や未来をつくるには、いろんな手段があります。職業でいえば起業家もひとつですし、政治家やNPO(非営利組織)、研究者という選択肢もある。そのなかで一番レバレッジが効くのは起業家だと私は思います。

私たちはいま、クラウドファンディングに加えて、遺贈寄付や基金を通して「お金を流す」こともはじめています。

例えば、コロナ禍で設立した「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」は8億7249万円の寄付を集め、支援が必要な現場に最短14日で助成金を届けました。従来、寄付・補助金領域は、DX化が進んでおらず、煩雑さや閉鎖的な側面がありましたが、私たちは、データ、ネットワークを用いて、透明性高く、最適な場所にお金を届け、社会的インパクトの増大につなげています。


米良はるか◎READYFOR創業者兼代表取締役CEO。1987年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院メディアデザイン研究科修了。大学院在学中にオーマで日本初のクラウドファンディングサービス 「READYFOR」を立ち上げ、14年にREADYFORのCEOに就任。21年には内閣官房「新しい資本主義実現会議」に民間構成員として参加。

岡島:私も同じ考えです。資本主義社会では、やりたいことをやるにはお金が必要です。ALEが人工流れ星をつくることに力を注いでいる理由は、流れ星はエンタメ性があって注目されやすいうえにマネタイズしやすく、大気のデータも取得できるからです。私には基礎科学を発展させたいという強い思いがあります。人工流れ星なら事業として成立するし、研究費がつきにくい基礎科学の研究も両輪で走らせることができます。

高橋:スタートアップの魅力は、課題解決の方法が確立していない大きな課題にも挑戦できる点だと思います。私たちが手がけているゲノム領域やALEの宇宙領域は、研究開発に投資をして、深く掘り下げていってようやく解決策が見つかるかどうかという世界です。人類にかかわる大きな課題をいまから解決しておこうと思うと、スタートアップのほうがやりやすい。

前田:ひとえに、利益は企業存続の条件であって目的ではない、ということだと思います。私たちは、水問題の構造的解決という目的に対し、小規模分散型水循環システムの開発を進めています。水再生をコンパクトにし、どこでも簡単に導入できることで、水不足や水汚染という課題を根本的に解決することが可能です。

水インフラを大規模集中型から小規模分散型に切り替えることで、人口が少ない場所でも低コストで導入でき、利用者が増えればさらにコストが下がる仕組みを作ることができます。

ただ、いままでと全く異なる仕組みを、既存の仕組みのなかでいきなり実装していくことはハードルがある。スタートアップであれば、ステージング環境のなかで実証し、うまくいけば本番環境に移し、うまくいかなければ変えていく、ということを簡単に行える。これこそが私たちスタートアップの役割です。スタートアップという手段を選んだ理由も、「目的に純度高くフォーカスできるから」に尽きます。
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文=瀬戸久美子 写真=小田駿一 スタイリング=堀口和貢 ヘアメイク=石川美幸 / 高松れい 制作 コーディネート=榛葉友輔(Empire Entertainment Japan) 美術=村山一也(目黒工芸) 照明=伊地知新 機材=アップルボックス

この記事は 「Forbes JAPAN No.097 2022年9月号(2022/7/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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