ビジネス

2022.07.25 08:00

世界、日本、「ポジティブな未来計画」論!インパクト・スタートアップたちの現在と今後

Forbes JAPAN編集部

米良:私は岸田文雄総理が主催する「新しい資本主義実現会議」に民間構成員として参加しています。4月には水野さんや前田さんと一緒に、岸田総理や木原誠二官房副長官と車座をしてきました。そこでは、私たちのようなスタートアップは「成長」と「分配」を同時に叶えている存在であることを伝えて、より民間が大きな役割を果たすためにどんな仕組みや連携が必要かなどを議論してきました。

政府も新たな資本主義や企業のあり方を模索しているなか、私たちの存在意義や目指す未来、アプローチ方法などを共有することは重要だと思います。

慎:一般的なスタートアップと私たちの大きな違いは、より深刻度が高い社会課題に向き合っていることだと思います。それでいて、スタートアップという形態をとることで資本主義に片足を踏み入れているので、まとまったお金を得られる可能性があり、社会性も事業性も両立しやすい。

私は金融の仕事が長く、人から出資を受けたほうがいい事業と、お金を借りたり寄付してもらったほうがいい事業とがわかります。なぜ金融の世界で起業したのかというと、自分が得意で、かつビジネスベースでも成立すると考えたから。途上国で金融包摂の事業に取り組めば、社会的なインパクトも収益も出せる。企業規模を大きくし、「民間の世界銀行」といわれる組織をつくることができたら、使えるお金が増えた状態で次の課題解決に取り組める。

とはいえ、最初はなかなか理解されませんでした。よく聞かれたのが、「お金をもうけたいの?それとも社会貢献がしたいの?」という言葉です。

米良:私も起業したばかりのころは、「この社会には、どちらかしかないよ」と言われました。でも今の事業を10年以上やるなかで、この領域が存在するという確信が高まりました。

慎:社会課題がどんどん増えるなか、私たちには、一部の社会課題は解決することでちゃんと利益を出せるという感覚があります。だけどリターンが爆発的に出るわけではない。投資で言うとミドルリスク、ミドルリターンです。ちなみに、皆さんは投資家にどんなプレゼンをしていますか。

水野:基本的には「もうかります」路線です。これからはテクノロジー教育の分野がすごく伸びますと説明したうえで、「プレイヤーはほぼうちしかいない、だから独占的に勝てます」と伝えます。

星:私も基本、事業性の話が8〜9割です。残りの1~2割で社会性やESGなどの話をしますが、評価してくださる方と興味がない方とに分かれますね。一方で、私はCFOとして「期待値のコントロール」もします。

株主の皆さんのご期待に沿えるようベストを尽くしますが、株主を企業が選べるのは未上場の間だけです。当社では我々の考え方に共感する方に株主になってもらっています。21年のシーズンDラウンドの時も、上場時などの相対的に短い時間軸でのホームランディールを求めている方には、「もう少しアーリーステージの会社さんに投資されたほうがお互いにハッピーだと思います」とお伝えしていました。

サステナブルな関係性を築くには、しっかりコミュニケーションを取り、お互いに納得しながらWin-Winでいられることが大切だと思います。

(次回へ続く)

文=瀬戸久美子 写真=小田駿一 スタイリング=堀口和貢 ヘアメイク=石川美幸 / 高松れい 制作 コーディネート=榛葉友輔(Empire Entertainment Japan) 美術=村山一也(目黒工芸) 照明=伊地知新 機材=アップルボックス

この記事は 「Forbes JAPAN No.097 2022年9月号(2022/7/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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