資本主義のアップデート、再構築の中心的役割を担い、これからの経済、社会の「新しい主役」となり「ポジティブな未来」をつくる、大企業、スタートアップ、投資家、資本市場など、世界で躍動し拡張している「インパクト・エコシステム」の全容を見ていく。特集は、その象徴的な存在とも言える、日本を代表する「インパクト・スタートアップ」8社が一堂に介した座談会から始まる。WEB版では3回にわけて掲載していく
「問題を作った同じレベルの考え方では、問題を解決できない」。20世紀最高の科学者、アルベルト・アインシュタインの言葉だ。複雑に絡み合う社会課題が存在するなか、その構造的な解決に、事業性と社会性を両立しながら「新しいスタイル」で挑む企業が世界中で生まれている。
その新しい主役である「インパクト・スタートアップ」の現在地点と可能性、未来について―、五常・アンド・カンパニーCEOの慎泰俊、READYFOR代表取締役CEOの米良はるか、ライフイズテック代表取締役CEOの水野雄介、WOTA代表取締役CEOの前田瑶介、ユニファ取締役CFOの星直人、ジーンクエスト代表取締役の高橋祥子、ALE代表取締役CEOの岡島礼奈、ヘラルボニー代表取締役CEOの松田崇弥という日本を代表する8人に語ってもらった。
まずは理想の未来の共有から始まる。
米良はるか(以下、米良):READYFORは、「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」というビジョンを掲げています。クラウドファンディングのサービス開始から11年になりますが、プロジェクトの掲載数は累計約2万件、サービスを通じた累計支援額は280億円を超えました。
私が描く理想の社会は、会社のビジョンと同じです。私は、資本主義には構造的な課題が存在しており、短期的な利益に資金などのリソースが集中する傾向にあると思っています。ただ、社会課題は経済合理性の外側にあり、そういった分野、例えば非営利セクターや、研究分野、地域活性化などにお金を流すことで、課題解決を取り残さない未来をつくりたいです。
慎泰俊(以下、慎):私が理想とするのは、生まれたときの初期設定でその人の未来が決められてしまわない世の中です。2014年に創業した五常・アンド・カンパニーはマイクロファイナンス事業を手がけています。カンボジア、スリランカ、ミャンマー、インド、タジキスタンの5カ国に9社のグループ会社があり、グループ全体の従業員数は8000人以上です。融資した顧客の数は120万人を超え、融資残高は800億円を突破しました。
私たちが目指すのは「民間版の世界銀行」です。途上国では先進国以上に初期設定で人生が決まることが多い。すべての人に金融アクセスを届けることで、この状況を変えようと取り組んでいます。
慎 泰俊◎五常・アンド・カンパニー創業者兼CEO。1981年生まれ。朝鮮大学校法律学科、早稲田大学大学院ファイナンス研究科卒。モルガン・スタンレー・キャピタル、ユニゾン・キャピタルでプライベート・エクイティ投資実務に携わった後、2014年に五常・アンド・カンパニーを共同創業。