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2022.07.24

美術館の外からアートの価値を高める 山峰潤也のキュレーター論

キュレーター / NYAW代表 / 一般財団法人東京アートアクセラレーション共同代表の山峰潤也


──5⽉には「MEET YOUR ART FESTIVAL 2022 ʻNew Soilʼ」でキュレーターを務められましたね。このイベントで目指したことについて教えてください。

僕が「New Soil」というテーマを出しました。食文化も舞踊も歌も、大地の上で自然と共に生きる人間の営みの中から生まれてきた部分が多いと思うんですよね。発酵食品やお酒、豊穣の祭りや自然信仰から生まれる神楽など。しかし、時代が進むにつれて分野化が進んでいくことで、文化が分断されていってしまった。そこで、今改めて文化を育む「土/土壌」を考える機会を作ろうと思ったんですね。

また、以前友人の防災士に聞いた、「防災のことを考えながら地域の文化を見ていると、祭りは防災なんだ」という言葉もインスピレーションになっています。祭りとは、人為的にある種の有事をつくり、その時に誰がどのように動くか、きちんとそのコミュニティがまとまれるかどうかを問うことだそうです。

共通していることは、「分野」と「人」をつなぐ、つまりミックスゾーンをつくること。これはANB Tokyoでやりたかったことでもあって、ミックスゾーンで作られる人脈が新しい何かを生み出す土壌になるだろうと考えています。

また、エシカルやサスティナビリティをテーマに自然を考えるという意味での「大地」でもあります。横断していく関係性というソイル、考えるべき自然というソイル、そして、その2つを踏まえてこれからの新しい土壌としてのソイルという「New Soil」というわけです。


山峰氏がキュレーションを務めたMEET YOUR ART FESTIVAL 2022 ʻNew Soilʼ 展覧会風景(photograph by Kayo Igarashi)

こうしたイベントや展覧会で問いを問う人と、それを受け取って実社会の中で一つ一つ解決していく両者の関係は非常に大事です。問いを問う人は、その問いを受け取る人がいないと意味がありません。これは、水戸芸術館で手掛けた展覧会で実感したことでした。

当時は、情報社会における問題を定義して打ち出すことに躍起になっていたんですが、それを見たボランティアさんから、「山峰さんがおっしゃったいことはわかりました。では私達はどうしたらいいんですか」と言われて、すごいショックを受けたんです。「そこから先は自分の仕事じゃない」と思っていましたが、「いや、違うな」と。これをマージするところまできちんとやらないと、その問いは空中に消えていって終わってしまうんだと感じました。

だから、問いとアクションの関係性をつくりたい。受け取った問いや「何かを大事にしたい」という気持ちを、それに基づくアクションが、経済合理性だけではなく、人間性も問われる時代の中においてより大事になってくると思います。
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文=堤美佳子 ポートレート=小田駿一 編集=鈴木奈央

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