KFFの調査は、3年間にわたって妊娠・出産に関する出費を検証したもので、分娩だけにテーマを絞った他の多くの研究と比べて、長いスパンでこれらの出費を追っている。米国では、妊婦や子どもの医療にかかる費用や、金銭面での支援は、在住する州や、加入している医療保険によって大きく違う。さらに、無保険の妊婦や母親は、最低限必要なケアも受けられないリスクを抱えている。
こうした金銭的の負担、ならびに、妊娠している人とその子どもが負うリスクを過度に負わされているのは、米国社会でも最も貧しい層や有色人種のコミュニティだ。こうしたグループでは、もともと病気の罹患率や死亡率が極端に高いが、この傾向は妊娠や出産に関して特に顕著だ。
さらに、連邦最高裁が「ロー対ウェイド判決」を覆した余波で、不公平な状況はさらに深刻化するとみられる。専門家からも、今回の判決変更は、有色人種や貧しいコミュニティに過大な悪影響を与えると警告の声が上がっている。
米国は、妊娠・出産費用が世界で最も高額な国だ。KFFによると、今回の調査対象となったのは、何らかの形で医療保険が適用された治療だけだという。ということは、完全に自己負担の治療については、この数字に含まれていないことになる。
つまり、ビタミン剤や、処方箋なしで購入できるOTC薬(市販薬)など、多くの女性が妊娠中や出産後に使うものの費用が含まれていない可能性がある。さらに、不妊治療や、保険会社が指定する「割引料金が適用されるネットワーク」に参加していない医療機関から受けた治療の費用などは、完全に除外されている可能性が高い。
米国に住む中間所得層で、共働きの大人2人と子ども2人で構成される世帯の場合、子育てにかかる費用は、子ども1人あたり28万6000ドルにのぼる(CNBCが、2015年の米農務省データをインフレ調整した数字)。しかも、保育などの子どもに関するサービスの費用は、その多くがインフレ率を上回る勢いで上昇しており、実際にはこれより高額になっている可能性が高い。