米国の妊娠・出産費用は2万ドル超、社会的弱者に過度な負担

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米国では、妊娠・出産に2万ドル近くの費用がかかることが、7月13日に発表されたカイザー・ファミリー財団(KFF)による調査で判明した。

この調査結果からは、多くの世帯が高額な費用を払うのに苦労しており、貧しい女性や有色人種コミュニティが過度な負担を強いられる実態が浮き彫りになった。さらにこれらの人々は、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認める「ロー対ウェイド判決」を覆した米連邦最高裁の判断によって最も大きな影響を受ける者であり、合法的で安全な人工妊娠中絶にアクセスすることが難しい状況にある。

大企業の雇用主が提供する医療保険に入っている女性の場合、妊娠・出産・産後ケアに関連する費用は、3年間にわたる調査期間の平均で1万9000ドル前後にのぼる。これは、2018年から2020年にかけて、200万人以上の女性に関する医療費請求書を対象としたKFFの分析結果から導かれた数字だ。

KFFによると、このうち3000ドル近い費用は自費で支払われており、保険でカバーされる分は1万6000ドル強だという。

出産にかかる費用は、分娩方法によっても大きく変わってくる。帝王切開は、そもそも普通分娩よりも費用が高い。それに加えて、合併症や手術からの回復、さらには、帝王切開を選択するに至った母体の健康状態などが相まって、高い費用がかかる可能性が高まる。

帝王切開の場合、妊娠から出産にかかる費用は2万6000ドルに達する。これは、普通分娩の平均額である1万5000ドルと比べて77%高い金額だ。

一方、自己負担額では、分娩方法の違いによる金額の差は小さくなる。帝王切開出産を行った場合の妊娠からの自己負担額(3214ドル)と、産道経由の普通分娩での自己負担額(2655ドル)を比較すると、帝王切開のほうが25%上回った。これについて、調査を行ったKFFでは、加入している医療保険において、自己負担額や立て替え額に上限が設けられていることが理由だとみている。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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