ただし、マスクによって顔の印象が変化すると感じるのは日本人に限ったことではないようだ。筆者は先月まで、パリ市主催の市民講座に通っていたが、学期の途中から屋内でのマスク着用が解除され、教室内でもマスクを外してもよいことになった。
マスクなしで初めて見る仲間の顔に、お互い「あなた、そんな顔だったのね!初めまして!」と冗談めかして言うこともあり、マスクの有無で見た目にギャップを感じるのは人種を超えて世界共通にあることなのだ。そして、そのギャップを何故か恥ずかしいと思ってしまうのが、日本人独特の感覚なのであろう。
6月のパリ、シャルル・ド・ゴール空港。日本からの観光客も増えてきた
長きに渡るコロナ禍を振り返れば、いまなお世界が一丸となって闘い続ける必要はあるものの、各国の対策や感染状況には、その国らしさが反映されている。
日本では「外国人はマスクが嫌い」とひと括りで語られるが、その着用状況は国によって異なる。着用するなら高機能マスクを求める厳格なドイツ、列の順番は守ってもマスク着用は守らないイギリス、適当そうで意外に真面目だったフランス。それぞれのお国柄の新たな一面も垣間見えた。
この3国と日本を比較した場合、ワクチン接種率に関しては日本が約80%といちばん高いものの、そこまで大きな差はない。しかし人口比による感染者数で言えば日本は圧倒的に少ない。
例えば、6月に入ってからのイギリスでは平均2万人前後と日本の感染者数に近い数字だが、そもそもの人口が日本の約半分であるし、イギリスと同等の人口であるフランスでは直近で1日10万人以上の感染者を出す日もあり、今後も増加傾向にあるとも言われている。
まだまだ予断は許されぬ世界の感染状況だが、高い安全意識と社会規範、そして恥の感覚の強い国民性も相まって、どの国の人間よりも日本人がマスクをはずしにくくなっているのは無理もないことだろう。
とはいえ、最近では外国人観光客の受け入れも開始して、日本もコロナ禍における大きな転換期も迎えている。日本のマスク着用がインバウンドという黒船によって緩和されていくのか、感染者数がまた増加し始めていることでさらに鉄壁の守りとして維持されていくのか、この夏は正念場となりそうだ。