機内を見渡した印象では、マスク着用派とノーマスク派は半々程度。キャビンアテンダントは終始マスクなしで機内を動き回り、ドリンクサービス中も本来の笑顔を見せていた。
終息とはいかずとも、新型コロナウイルスとの付き合い方がようやくわかりかけてきたいま、先んじてマスク着用の緩和を進める欧州は、どのような状況にあるのか。フランスとその周辺国のマスク事情をレポートする。
マスク着用に文化の違いも
まずは、筆者の住むフランスだが、マスク着用義務は全面的に解除され、公共交通機関を含む屋内や屋外ともに、どこでも自由にマスクなしで過ごすことができるようになっている(病院や一部介護施設のみ着用義務あり)。
実際、混雑したメトロに乗っても、マスクをかけている人は2、3割程度。6月中は夏の日差しが強まるにつれ、マスク率もかなり下がった。ただし、7月に入ってからは感染者の増加を受け、政府も公共交通機関でのマスク着用を推奨し、マスクをする人もまた少しずつ増えている。
パリ市内、マスク着用なしで乗車できるメトロ
フランスがマスク解除に踏み切ったのは5月中旬。今春までの厳しいワクチン接種キャンペーンの甲斐もあり、接種率約79%と高い数字を達成できたからだ。
もちろん、ワクチン接種で完全に新型コロナウイルスの感染を防げるわけではない。筆者のまわりでも、ブースター接種後に感染した人はおり、最近も知人が感染したばかりだ。
しかし、そのいずれもが軽症であり、それこそワクチン接種の効果であると言える。フランスは、完全抑止よりも軽症化によってコロナ禍での共存する道を選んだのだろう。
周辺国にも目を向けよう。前述の筆者が搭乗したマスクフリーの便は、6月上旬のパリからベルリンに向かうエールフランス機だった。航空会社の規定によれば、機内でのマスク着用は基本推奨だが、義務付けるかどうかは行き先次第。その結果、マスク着用自由の飛行機が欧州上空を数多く飛んでいる。
ドイツの6月時点のコロナ対策は、交通機関や医療機関でのマスク着用のみ。ワクチン接種率は約77%で、軽症化を機に屋外や屋内でのマスク着用義務は3月中旬からなくなった。
ただドイツには独自のマスク規定があり、「FFP2マスク」と呼ばれる医療用の高機能マスクしか正式には認められていない。今回の旅行中では、FFP2マスクをする現地の住民と、使い捨てマスクどころかマスクもしない旅行者と思われる人たちの完全なる二分化を目撃した。
ベルリンの美術館にて、FFP2マスク着用を推奨するサインが