ビジネス

2022.07.11 20:00

COEDOビールを手がける協同商事が「八百屋」を始めたワケ


朝霧:とはいえ、こんな堅苦しい話を押し付けがましく聞きたくはないでしょうから、「ORGANIC&CO.」はクラフトビールやオーガニックの野菜を気軽に楽しめる場にしたいなと。また、今まで物流や卸売りを構築してきた一方で、裏方として思いを伝えることができずにいたので、生活者の方と会話をするショールームの意味合いも込めています。

「ORGANIC&CO.」(オーガニックアンドコー)

中道:しかし、オーガニックの普及率が1%未満とは思いませんでした。日常でも目に触れる機会は多い気がしますが、普及していない理由はほかにあるんですか。

朝霧:価格という点で、やはり富裕層向けの道楽的なイメージがつきまとっていると思います。ほかにも、化学物質や農薬を使っていないことから、アレルギーのリスクを避けるためにすがるような思いで取り入れるなど、ストイックさと享楽的なイメージが共存している面があります。

しかし、オーガニックは普及していないから意味がないのかと言えば、それは違います。そもそも農業は、人間の都合で植物を繁殖させているため、生態系としては自然から外れています。なので、極力虫も殺さず、雑草を農薬でなく草取りで駆除するという、地球と一体になったオーガニック農業には意味があるはずです。

もちろん、意識が高い言い方ばかりしていると、「う〜ん?」と思われてしまうため、「ORGANIC&CO.」は“ファンオーガニック”を掲げ、「なんか楽しい」「なんか素敵」と、感覚的にオーガニックに触れられる場にしたいと思っています。

中道:お店の写真を見ると、まさに感覚的ですよね。その上で、八百屋だと。

朝霧:改めて見直されてきている専門店の良さを深堀していく存在として、八百屋という業態にフォーカスした展開を考えています。卸売りをしてきた経験から、卸価格に店舗の維持コストを乗せた値段で商品を販売でき、私たちならではのリーズナブルな価格でお出しをすることもできます。

今や世界中で“レジ袋”を廃止しようと現場や生活者が努力しているのに、流通では今も野菜を袋詰めにしています。しかし、ふっと見ると、海外の八百屋やスーパーでは、野菜は形もバラバラで山積みされた状態で売られ、袋詰めもさていません。その中から、消費者がこれだと思う野菜を買っていくわけですよね。

日本の小売店にはPOSレジという商慣習があり、そのシステムを維持するためには確かに袋詰めをしないといけないかもしれません。ただ、その結果として有機農業から大量のごみが出てしまうのは、あまりに逆説的です。だからこそ、自分たちで八百屋を運営すれば、余分な包装も、袋詰めや規格選別する人件費もかからないため、その分お客様に還元することもできます。



今は子どもたちもSDGsの教育を受け、特にZ世代以下は肌に直接つける化粧品もオーガニックコスメを選んでいると聞きます。肌につけるものと同じくらい、体の中に入れてしまう食べ物は大事なはず。しかしそうした考えに触れる機会が少ないので、「ORGANIC&CO.」で接点を作っていけたらいいなと。

もちろん、子どもたちが生の野菜を買うわけではないので、お店ではオーガニックの野菜や果物を使ったドリンクなどを飲んでもらい、「美味しくて、お店もいい感じだった」と思ってもらうことで、オーガニックというキーワードが「学校で習ったSDGsはこういうことなんだ」と繋がればいいなと思っています。
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文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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