ビジネス

2022.07.11

COEDOビールを手がける協同商事が「八百屋」を始めたワケ

協同商事コエドブルワリーの代表取締役社長 朝霧重治

日本の企業が世界に出るときに足りないものは何か。そのひとつが“クリエイティビティ”だとしたら、どうしたら乗り越えていけるのか。

Kitchen & Companyの中道大輔がナビゲートするPodcast「VISION TO THE FUTURE」とForbes JAPANがコラボレート。国内外で活躍する“視点”のあるゲストとともに、考え、発信していく。

7月11日配信は、日本のクラフトビールの草分けとして知られる「COEDO」を手がける協同商事コエドブルワリーの代表取締役社長、朝霧重治がゲスト。祖業である農業への思い、あえて“八百屋”を掲げる新プロジェクト「ORGANIC&CO.」について聞いた。


中道:前回に引き続き、朝霧重治さんをお迎えしています。先週は「COEDO」について聞かせていただいたので、今回はビール以外の活動について紐解いていきたいと思います。早速、協同商事について詳しく教えてもらってもいいですか。

朝霧:協同商事は、1970年代に義理の父が設立した会社になります。そこを引き継いで私が関わるようになり、一言で表現すれば農業の会社と言えます。設立当時、オーガニックという言葉は日本で浸透しておらず、有機農業の定義もまだ確立されていなかった時代。そんななか、農家に契約栽培で作っていただいた有機農産物の産地直送などを行っていました。

協同商事という社名も、農家と生活者と協同し、新しい日本の農業を作っていく商事会社を設立したいという思いからつけられています。私たちが前面に出ていくことは少なく、基本的には農家の皆さんのお手伝いとして、物流や卸売りを手掛けてきました。

そんな会社が、なぜビールに進出したのかと思われる方も多くいらっしゃいます。



農業は畑を健康に保つ土づくりが重要です。緑の肥料と書いて“緑肥”という種類の植物を畑に植えると、自然に土を浄化したり栄養分を蓄積してくれる機能があります。埼玉では麦を緑肥として植えて畑にすき込む農業がありました。その麦を収穫して有効活用することがビール作りのきっかけになります。

とはいえ、麦を収穫して販売するだけでは付加価値はつきません。農業は一次産業で、そこからものづくりをする二次産業のメーカー、さらにサービスとして提供する三次産業があります。それぞれの産業で付加価値をつけることで、産業規模が大きくなり、モノの値段も高くなっていきます。

ヨーロッパの先進国を見ると、生産者は原料供給にとどまらず、高付加価値のものづくりまで行うことで農業全体を盛り上げています。代表例がワインで、日本で生活していてフランス産やイタリア産のブドウを食べることはまずありませんが、両国のブドウ生産者が仕上げたワインは喜んで飲まれています。

同じように、日本でも役割をメーカーと分担するのではなく、生産者が加工まで行い付加価値をつけていくことで、農業がより高付加価値で魅力あるものになっていくのではないかと考えました。

それに、製造原価が安価であるから大量生産の工業は発展するものですが、今の日本で工場を作るのは高くつきすぎる。そうすると、高速度での大量生産ではなく、その逆の低速度で少量というものづくりが合っているのではないかと。

実際にヨーロッパはその手法を取っていて、私たちはそれをビール作りに当てはめてみたのが原点で、今に至っています。
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文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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