藤田:ありがとうございます。タイミングでいうと、まさに今がヘルスケアやヘルステック、ウェルネスからウェルビーイングに移行するための、大事な時期だと思います。
幸せと健康、これはニワトリタマゴの関係で、当然、健康だから幸せを感じられるというのもあるのですが、私はやはり「幸せになる希望」がカギだと思うんです。生きる目的や希望、つまり幸せの兆しが先に見えたときに、健康でないとチャレンジできないし、自分のマネジメントが出来ない。そこで初めて、健康を強く意識するんじゃないかなと。
人々の健康寿命の延伸のために、もちろん体へのアプローチも必要ですが、同時に希望を作ることも大事なんじゃないかと感じます。ライフサイエンスの研究が進む中で、人の健康を一番蝕むのは塩分や糖分ではなく、ストレス、あるいは切望という話もあります。そういう意味でも、やはり心の健康に目を向けたいですね。
藤江:自分自身を振り返ってみても、希望は大事ですね。そして、希望というのは、一人ではなくて、チームで作るから楽しかったり、一緒に目指すからやりがいになったりしますよね。
藤田:そこに美味しいものと美味しいお酒があったら最高ですね! 私は実は、順番としてはそういうものだと思うんです。自分のやりたいことや人との関係性において実現したいことがあり、それを叶えるために何が必要なのか、という考え方です。
例えば、お風呂の洗剤を扱うメーカーの事例がわかりやすいのですが、そのメーカーには競合がいて、長年「どちらの洗剤のほうが汚れを落とせるか」という戦いを続けてきました。ところがある時、「消費者は汚れをどう落とすよりも、掃除を早く終わらせて家族と時間を過ごしたいのではないか」と視点を変えて、擦らずに洗える商品を開発。すると大ヒットしたんです。
つまり、機能ではなくて、その先にある上位概念、あるいはもっと「顧客や消費者の幸せ」を考えることで、新しい市場が生まれる。いろんな産業がこれから同じような変化を迎えると思います。
クルマも、これまではかっこよさや速さや燃費が、そして昨今は環境性能が重視されてきましたが、自動運転が進んでくると、車内の時間をいかに楽しめるかに変わってくる。テクノロジーによって、いろんなことができるようになる、あるいはしなくてもよくなる時に、結局人が求めるのは楽しさかもしれない。
藤江:そうですね。当社でも、自分たちの子どもや孫のために、あるいは100年先に向けて、我々は今何ができるか、何をしていくのがいいのかを考えていますが、こうした議論や検討、具体的な取り組みをしていると自分たち自身が幸せになっていくなと感じます。これは、希望について思いを馳せているからなんでしょうね。