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宇宙

2025.02.10 12:30

小惑星ベンヌ、地球衝突で世界規模の大惨事招く恐れ 最新モデル研究

小惑星ベンヌの合成画像。米航空宇宙局(NASA)の探査機オシリス・レックス(OSIRIS-REx)が2018年12月2日に約24kmの距離から撮影した画像12枚で作成(NASA/Goddard/University of Arizona)

小惑星ベンヌの合成画像。米航空宇宙局(NASA)の探査機オシリス・レックス(OSIRIS-REx)が2018年12月2日に約24kmの距離から撮影した画像12枚で作成(NASA/Goddard/University of Arizona)

エッフェル塔(高さ約330m)よりも大きい小惑星ベンヌは、潜在的に危険な小惑星(PHA)の1つで、将来的に発生する危険性のある地球衝突事象をまとめたセントリー(監視)リストの3位に位置づけられている。ベンヌは2182年9月24日に地球に衝突する可能性が小さいながらもある。韓国・釜山大学IBS気候物理学センター(ICCP)の科学者チームが発表した最新モデル研究によると、もし衝突が起きれば、地球規模の冬や干ばつなどの連鎖反応を引き起こす恐れがある。

ベンヌは先週まで、セントリーリストの2位だった。小惑星2024 YR4が発見されたことで、順位が下がったのだ。2024 YR4は1.3%の確率で、2032年12月22日に地球に衝突する可能性があり、国連の惑星防衛組織が警戒態勢に入っている。

大きさと衝突確率

ベンヌは中型の小惑星で、NASAによると、赤道直径は約500mだ。6600万年前に地球に衝突してチチュルブクレーターを形成し、恐竜を絶滅させた直径10kmの巨大小惑星に比べると、はるかに小さい。また、2182年の衝突確率は2700分の1(0.037%)しかない。

それでも、もし衝突が起きれば、地球の大気と生態系のバランスが著しく乱される恐れがある。ICCPのラン・ダイとアクセル・ティンマーマンの研究チームが5日付の学術誌Science Advancesに発表した最新の研究論文では、地球系と大気化学の最先端モデルを用いて、ベンヌ型小惑星による地球衝突の影響をシミュレーションした。

最悪事態のシナリオ

今回の最新研究によると、最悪の事態のシナリオでは、ベンヌとの衝突後に4億トンにおよぶ塵(固体微粒子)、エアロゾル、天体の破片や灰などが地球の大気圏に放出される。これにより、気候の混乱の連鎖が引き起こされる可能性がある。まずオゾン層が32%減少し、地球全体の気温が4度低下し、降水量が15%減少する。こうした状況によって「衝突の冬」が発生し、植物の光合成が阻害され、食料生産と生態系に連鎖的な影響が及ぶ可能性が高いと考えられる。このシナリオでは、農作物の収穫高が3分の1減少し、漁獲高が4分の1減少する。

ベンヌ型小惑星の衝突による4億トンの塵放出に対する気候と生態系の反応を示した図。表面温度(左上)総降水量(右上)陸地(左下)と海洋(右下)の純一次生産性の衝突後の変化を表している(Institute for Basic Science)

ベンヌ型小惑星の衝突による4億トンの塵放出に対する気候と生態系の反応を示した図。表面温度(左上)総降水量(右上)陸地(左下)と海洋(右下)の純一次生産性の衝突後の変化を表している(Institute for Basic Science)

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翻訳=河原稔

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