また、本格的なFPSであるにも関わらず、キャラクターデザインやブランディングにおいて、スタイリッシュな表現にこだわった点も、大きな独自性の1つです。こういったゲームでは、敵を撃った時にリアルに血が飛び散る表現をするものも多いのですが、「VALORANT」では露骨な描写をなるべく避け、うまくデザインに溶け込ませるように意識しています。それが結果的に、より幅広い層のプレイヤーに受け入れられた理由の1つになったと思います。
プレイヤーが増えれば自然と層は厚くなり切磋琢磨が起きる。するとプロを目指す人も増え、新しい才能が発掘されるエコシステムができやすくなる。そのためには、プレイヤーの頂点で戦うプロ選手の方々にとって、本当の意味で「戦う価値がある場」をいかに提供できるか。それが我々ゲームパブリッシャーにとって重要だと考えています。
──先日の国際大会「2022 VALORANT Champions Tour Stage1 Masters」をめぐる盛り上がりは、何かが違ったと僕も実感しました。ファンが一体となって日本チーム「ZETA DIVISION」を応援していた熱狂を見て、日本のeスポーツシーンが1つ“壁”を超えたんじゃないかと思ったんです。視聴数も桁1つ違う規模感でしたが、この出来事をどう捉えていらっしゃいますか?
ゲームを通して脳と心を鍛える「習い事」としてのオンラインゲーム家庭教師のサービスを提供する「ゲムトレ」代表の小幡和輝
私は(この大会での盛り上がりは)まだ“Just beginning”だと捉えています。日本代表チームの「ZETA DIVISION」が世界3位になったことで、一気に観客の熱量は高まりましたが、eスポーツの価値を世界と同じレベルまで持っていけるかどうか。それが、今後の鍵になるのではないかと。
ピークの同時視聴は全世界で約100万人でした。前回の2022 VALORANT Champions Tour Stage1 Mastersと言われる世界大会の最高値は41万人。41万人が同時に熱狂できるコンテンツって、いま他にほとんどないと思います。
しかも、メインの視聴者層はZ世代やもっと若い中学生や高校生たち。彼らを3時間とか5時間とか、試合中ずっと夢中にさせているわけです。
「2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 Masters LOWER SEMIFINAL」でZETAとPRXが戦った時のパブリックビューイングの様子(4月23日)
ゲームの試合はスマホやPCで見ている人も多いですが、世界中にはあちこちにパブリックビューイングの場が設けられていて、オフラインでも人々が街を壊しそうなほど熱狂している。実質値でいうと全世界で1億人くらいが試合を見ているという状況が、いまeスポーツの世界では起こるようになってきているんです。
eスポーツは若い世代を惹きつけ、熱狂させ、ものすごく集中させている。私たちはそういう場を提供しているわけですが、日本ではこの事実をまだまだお伝えできておらず、私はマーケティングキャリアが長いのですが、例えばこの市場の可能性を日本のマーケターたちにまだ正確にお伝えできていないのが事実です。