彼はこのコラムの中で、多くの産業がソフトウェア企業によって置き換わりつつあることを指摘し、そのトレンドがその後もより広範囲な産業に影響を及ぼすと予想していました。この11年前のアンドリーセン氏の予想は現実となり、いまやファッション、金融、自動車など、ほとんどの産業において、ソフトウェアによって成立することを前提とした戦略とアクションが必須となっています。
しかも、ソフトウェアを動かすコンピュータの高性能化は激しく、スーパーコンピュータの過去30年の性能向上は、5年で10倍、10年で10倍x10倍の100倍、20年で100倍x100倍の1万倍、30年で100万倍になったとも言われています。
企業が持つ経営資源の中で、これほどの速度で成長していくものはなく、このコンピュータをいかにして自社の経営の進化のために使うかというのが、生き残るための重要なポイントになってきていることは、言うまでもありません。
競争の法則を変えたソフトウェア化
ソフトウェア化は、機能や性能を指数関数的に進化させていきます。1年目を1とすると、2年目には2、3年目には4、4年目には8、5年目には16になっているといった具合です。これは進化が2のべき乗(「aのn乗」の形で表される数のこと)だった場合ですが、3のべき乗だったりすると、進化は更に急速になっていきます。これがデジタル化においては、「勝者総取り」(Winner Takes All)という結果を導きます。
指数的な成長性は、デジタルドリブンなビジネスモデルに成功した企業に対して、2番手以後がなかなか勝負をひっくり返すのが難しいという状況を作り出します。
逆に考えれば、デジタル時代には、べき乗の法則になりやすい形でプラットフォームやソリューションを組み立てる事が重要になります。さまざまなプラットフォーム提供者が機能の構成要素をマイクロサービス化し、デジタルドリブンな競争に備えているのはそのためです。
つまり、旧来の線形な差分成長型の仕組みから、指数的な仕組みを持つことで競争の法則を異なる次元に進化させることができるわけです。