「トップガン マーヴェリック」では、主人公のピート・ミッチェル大佐(コールサイン「マーヴェリック」)は、前作ではライバル関係にありながら最後は互いを理解するに至るアイスマン(いまは栄達を果たして海軍大将になっている)の計らいで、アメリカ海軍の戦闘機搭乗員養成機関である「トップガン」に戻ってくる。
そこには、邪悪な国の核プラントを攻撃する極秘ミッションのために、トップガンを優秀な成績で巣立っていった若いパイロットたちが集められおり、マーヴェリックは困難な訓練を指導する教官となる。軍のなかでも抜きん出た戦果を誇るマーヴェリックだったが、その型破りな性格から、けっして組織との折り合いがいいわけではない。果たして極秘ミッションは成功するのだろうか。
(c)2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
これが「トップガン マーヴェリック」の大まかなストーリーだが、戦闘機が飛び交うダイナミックなスカイバトルのなかに、前作と同様さまざまな熱いドラマも織り込まれている。この人間模様がかなり緻密に設定されており、前作ともどもこのシリーズが、ただパイロットたちを描いただけのアクション作品ではないということを証明している。
前作に名前だけ登場していたヒロイン
人間模様のなかでも、この「トップガン」シリーズに華を添えているのが、主人公であるマーヴェリックの恋愛事情だ。前作では、バーで知り合ってデートを申し込んだ女性が実はトップガンの教官チャーリー(ケリー・マクギリス)で、彼女との間で恋愛関係が芽生える。ともすれば戦闘機乗りたちの男臭い作品になるのを、このチャーリーの存在がひと味ちがったものにしている。
「トップガン マーヴェリック」では、残念なことにチャーリーは登場しない(ケリー・マクギリス曰く出演交渉もなかったという)。その代わり、ペニー・ベンジャミン(ジェニファー・コネリー)という過去にマーヴェリックと恋愛関係にあったという女性が、突如として登場する。実は、気づかなかったのだが、前作でこのペニーは、2度ほど登場人物の台詞のなかに登場している。
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マーヴェリックは禁止されている管制塔をかすめて飛行することがよくあるのだが、そのことで上官に呼び出される。「管制塔を掠めて飛ぶこと5回、同じこと(掠めて飛ぶ)を司令官の令嬢にも」と叱責されると、一緒に呼び出された相棒が、マーヴェリックの耳元に「ペニー・ベンジャミンか?」と囁く。
もうひとつは、相棒の奥さんがマーヴェリックを評して「女を泣かせる男だけど彼が好き」と語る場面。「あなたのおふざけは、みな聞いてるわ」と彼を揶揄するとき最後に「ペニー・ベンジャミン」という名前が登場する。日本語字幕では表記されていないが、ここでさりげなくペニーと過去に恋愛沙汰があったことが示されている。気づかないのも無理もない。
ペニーは、前作の「トップガン」では、実際に人物として現れることはないのだが、名前だけは登場しているのだ。その姿を見せることのなかったペニーを、まるであらかじめ予定していたかのように、続編のヒロインとして採用しているところが、物語としての粋な企みも感じさせる。