「トップガン マーヴェリック」では、このペニーは、戦闘機パイロットたちが集まるバーを経営している。過去に何度かマーヴェリックと恋愛模様もあったらしいのだが、詳しくは語られない。とはいえ、互いに歳を重ねて、憎からぬ関係ともなっている。
マーヴェリックとペニーの再会場面もなかなか印象的だ。マーヴェリックは好意を抱いていることを隠しもしないのだが、ペニーのあしらいは冷たい。バーのルールに抵触して、マーヴェリックは追い出されるが、次の日も彼は姿を表す。そこから2人の関係は次第に深まっていくのだが、悩めるマーヴェリックに道を指し示す存在としてペニーは重要な役回りも振られている。
確かに「トップガン マーヴェリック」では、最新鋭のカメラで撮影されたという実際の戦闘機を動員したスカイバトルはダイナミックで迫力もある。トム・クルーズの「実写」へのこだわりが随所に感じられる、目を瞠る映像は見どころのひとつだ。しかし、そのアクションシーンだけがこの「トップガン」シリーズの魅力ではない。
「マーヴェリック」というコールネームは「一匹狼」あるいは「独自の道を行く人」という意味だが、軍という組織のなかで阿(おもね)ることなく、昇進など気にも留めず、ひたすらテストパイロットして空を飛ぶことを願う主人公のキャラクターにも、実は共感を覚える。
『トップガン マーヴェリック』大ヒット公開中 / 配給:東和ピクチャーズ (c)2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
前出のトム・ウルフの「ザ・ライト・スタッフ」でも、人類で初めて音速を超えた男チャック・イェーガーについては、1章をまるまる割いて、いまもパイロットの間ではリスペクトされる男として紹介されている(映像化された作品ではサム・シェパードが演じていた)。
「トップガン」シリーズのピート“マーヴェリック”ミッチェルも、組織に嵌まらぬ一匹狼の恋多き男として描かれており、彼の魅力的なキャラクターもまた作品が愛される要素の1つではないだろうか。
36年ぶりに続編がつくられ、世界的に大ヒットも記録しているが、アクションシーンだけでなく、ストーリーづくりやキャラクター設定も、この作品が時を経ても魅力を放つ理由かもしれない。
前作でメガホンをとった故トニー・スコット監督をリスペクトした、マーヴェリックがカワサキのバイクを駆って、飛び立つ戦闘機と並走する場面。まさに我が道を行くマーヴェリックを象徴するようなシーンだが、ここでも音速に挑戦した男チャック・イエーガーのことが頭に浮かんだ。
連載:シネマ未来鏡
過去記事はこちら>>