今年30周年を迎えるサッカーJリーグ。開幕した1993年当時、私は小学5年生だったが、壮大なアンセムに始まった開幕戦の興奮をいまでも覚えている。
先日、サッカー日本代表が7大会連続のワールドカップ出場を決めた。Jリーグ発足が、日本がワールドカップ常連国になるまでのサッカー偏差値の底上げにつながったと言ってよいだろう。
発足から30年もの間、地域密着の理念を掲げてリーグ構造を熟成してきたことで生まれたJリーグの生態系に、私は勝手に、新しい経済価値の可能性を感じている。チームを取り巻く地域企業、サポーター、スタジアム、そしてホーム&アウェーの構造で、ヒット商品の新たな方程式ができそうなのだ。
そのひとつが、鹿島アントラーズの取り組みだ。アントラーズはいま、地元・茨城県鹿嶋市の高校に協力し、高校生による商品企画のアドバイスなどを行っている。地元企業のサポートもあり、実際に新しいドーナツ商品の創出が実現しそうだという。
ホームのカシマスタジアムでサポーターに販売すれば、PRと認知にもつながるだろう。そこで評判がよければ、サポーターたちがサポーター以外にも口コミで広げてくれる仲間になり、さらなる拡販につながる可能性がある。
こうした地域社会とJクラブをつなぐ活動を公式に行っているのが、Jリーグの「シャレン!」と呼ばれる組織だ。開幕当初から地域との連携を強く意識していたJリーグが、その連携を促進しようとつくった特命組織であり、地域の企業や教育機関、行政機関などとJクラブとをつなぐ役割を担い、地域活性化のエンジンとなっている。
Jリーグの機構内、加盟クラブ内でも、スポーツのパワーを生かした地域連携がどんどん大きくなってきており、その連携はいまや、社会活動的な動きから経済活動へと広がり始めている。
サポーターを「消費者」から「宣伝大使」に
私が面白いと思うのは、こうしたJクラブがハブとなる地域商品があると、ホームとアウェーの相互作用でPRのネットワーク効果が期待できるということだ。
例えば試合の際、スタジアムのスペースで、互いの地域商品のポップアップ販売を行う。すると、遠征に来ているアウェーチームのサポーターがホームチームのサポーターに地元商品をおすすめし、ホームのサポーターもまた、地元商品をアウェーのサポーターにおすすめするという構図が出来上がる。ここにPRの相乗効果が生まれるというわけだ。