試合終了時には、まるでワールドカップで優勝したかのような喜びの涙や驚き、ハグやキスの嵐が巻き起こった。ただ、サンマリノは試合に勝ったわけではない。試合は0対0の引き分けで、リーグ対戦表上では特に意味がない結果だが、サンマリノにとっては歴史を塗り替えるものだった。
サンマリノはチーム史上初めて、2試合連続で敗北を防いだのだ。1度目の引き分けは、0対0のリヒテンシュタイン戦だった。コーチらは拳を突き上げ、DFダンテ・ロッシは試合後のインタビューで涙を流した。
この勝利の意味を理解するには、同チームの歴史を少し学ぶ必要があるかもしれない。チームのサッカースキルは別としても、その情熱や忍耐強さ、スポーツマンシップは称賛に値するものだ。
サンマリノ代表選手は多くがアマチュアで、普段は銀行員や歯医者、会計士として働いている。チームは週に1度集まってトレーニングを行う。国際サッカー連盟(FIFA)の世界ランキングでほぼ常に最下位なのもうなずける。
チームの成績は笑いを誘う悲惨さだ。今回2試合連続で引き分けになるまで、同チームは40試合で敗北を重ねていた。試合での失点総数は730点、得点総数はわずか24点だ。唯一勝利した試合は2004年のリヒテンシュタイン戦だった。サポーターたちはサンマリノを熱心に応援しつつも、敗北を当たり前のこととして受け入れるようになった。チームのスローガンは「mai una gioia(喜びは一度もない)」だ。
勝つことではなく、失点をできるだけ減らすことを目標に毎回ピッチに立つには、強靭(きょうじん)な精神と気質が必要だ。フランコ・バレッラ監督はスポーツ・ウイーク誌に対し、選手らの心の強さを鍛えた方法について語った。
「考え方を変えるため、若い人をチームに迎えた。以前は遠征試合で相手に6回ゴールを決められ、次の日に何事もなかったかのように出勤していた。まるで、失点は避けられない運命であり、少なくとも海外旅行ができたので良しとしよう、という感じだった」(バレッラ)
バレッラはチームに厳しく接し、プロ精神と改善意欲を持つよう促した。FWニコラ・ナンニは「僕らの試合に対する現在のアプローチは、以前とは全く違う。以前は、ボールが回ってきたときにどうすればいいか分からなかった。バレッラのおかげで、今はそれが分かる」とコメントした。