チームには今も多くの苦い記憶がある。DFミルコ・パラッツィいわく、「最悪の記憶」は2006年9月に0対13でドイツに負けたことだ。
「その年、ドイツは自国で開催したワールドカップでイタリアに優勝を許したばかりで、僕たちを実質イタリア人だとみなして仕返しをもくろんでいた。ドイツはサンマリノを完全に負かしたがっていた。侮辱やからかいはなく、まるでロボットのようにただ前に出てゴールを決めていた」
サンマリノはさらに、他のチームから残酷で屈辱的なコメントも受けてきた。2016年にドイツに完敗した際には、ドイツ選手のトーマス・ミュラーが試合後のインタビューで、「これほど不釣り合いな試合をする意味が分からない」と発言。
「サンマリノにとってワールドチャンピオンと戦えることが特別なことだということは分かるし、向こうが強いタックルを通してしか防衛できないことも理解している。でもそれによって不要なリスクをもたらす試合にならないのか、疑問に思う」と続けた。
サンマリノ代表チームは即座に反論。広報責任者のアラン・ガスペローニは、このマッチが役に立った10の理由を列挙する痛烈な長文声明を出した。
こうして繰り返し逆風にさらされることには利点もある。それは、成功の瞬間はかけがえのなく、忘れられないものになるということだ。グラフィックデザイナーとして働くマッテオ・ビタイオーリは、5年前にリトアニアとの試合で決めたゴールを次のように回想している。これは、チームが14年間で初めて決めたアウェー戦でのゴールだった。
「体に残っていた全ての力を振り絞ってボールを蹴り、ボールがバーの下に入った。2、3分の間は完全な混乱状態で、チームメートの下に埋もれた。最初に僕の上に飛び乗って来たのはディフェンダーの兄だった。兄がどうやって誰よりも先に僕の元に駆けつけることができたのかは、今も分からない」
揺るぎない意志を持つサンマリノは、負けを重ねても歩みを止めず、サッカー愛を決して失わない。スウェーデンのサッカー選手ズラタン・イブラヒモビッチはサンマリノについて、「謝るな。ここにいるのは、その資格があるからだ」とコメントしたことがある。
2試合連続で敗北を防ぐことができた今、サンマリノはもうすぐ勝利を手にできるかもしれない。GKエリア・ベネデッティーニはスポーツ・ウイーク誌に対し、「私たちの試合は、一つ一つがおとぎ話を書いているようなものだ」と語った。