とはいえ、まだまだ日本ではエピディオレックスの知名度は高くありません。一体どのような効果を期待でき、どのような点に気をつけなければいけないのでしょうか? そもそもCBDはどんな成分なのでしょうか?
内因性カンナビノイド系に関する研究を重ねている早稲田大学理工学術院 准教授の野崎千尋さんに、詳しいお話を伺いました。
エピディオレックスとは何か?
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──本日はよろしくお願いいたします。まず、単刀直入にお聞きしますがエピディオレックスはどのような製剤なのでしょうか?
大麻草由来のカンナビジオール、CBDを主成分とした製剤です。難治性てんかんに効くと言われていますが、正直、エピディオレックスについて分かっていることはあまり多くありません。
以前、エピディオレックスがからだの中の何にどのように働いて効果を生じるのかという、作用機序に関する論文を探してみたのですが、ほとんど実験がされていないという状況でした。
──多くの人はそれを聞くと「本当に大丈夫なの?」と思ってしまいますが、他の薬も同じような感じですよね。
そうですね。日本で薬として売られていたら、すべて作用機序が明らかになっていると勘違いされがちですが、現実はそうでもありません。見方を変えれば、「なぜ効くのかはよく分からないけれど、とにかく特定の症状に対して一定以上の効果を見込むことができる薬」も非常に多いです。漢方薬みたいに。
エピディオレックスはヒトを対象とした臨床試験以外では、最低限の安全性試験が行われているくらいです。ある程度以上の効果が認められ、かつ死に直結するような大きな副作用が無いということで、使ってもいいとされているのです。
──なるほど。
モルヒネやアスピリンは昔から薬草として使われていた植物の成分で、特定の症状に効くことはなんとなく分かっていました。それを詳しく知りたいと思った人たちが研究を重ねた結果、少しずつ作用機序などが分かってきたのです。
おそらくエピディオレックスも、モルヒネやアスピリンと同じような流れを辿るでしょう。言い換えれば、これから臨床的あるいは非臨床的な基礎データが集められていくということです。
──それはCBDも同じなのでしょうか?
はい、基礎データはほぼ無いといっていいでしょう。例えば、よく「妊娠している人がCBDを摂取しても問題ないのか?」と聞かれるのですが、胎児にどれくらいのCBDがいくのかはほとんど分かっていません。
また、CBDは睡眠にいいとされていますが、その効果はある程度以上の規模の臨床試験などで実証されているわけではありません。あくまでも個人の感覚と経験でしかない、というのが現状なのです。
──とはいえ、今、多くの研究が進んでいますよね?
CBDも含む植物性カンナビノイド(大麻草に含まれる物質の総称)の研究は世界的に増えて来ています。これはアメリカを始めとする西欧諸国において医療用の大麻が解禁されたこと、またそのことを受けてヒトにおける臨床研究にも使用できるようになったことが大きく影響しています。今までは大麻先進国といわれるアメリカであっても研究に対する制限は大きかったのですが、現在はだいぶ緩和されています。
今後、世界各国におけるCBDやそれを主成分としているエピディオレックスの研究はより増えていくと思います。