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2022.06.13 12:30

日本で治験が始まったCBD製剤「エピディオレックス」とは?

野崎千尋(左)と柴田耕佑(右)


エンドカンナビノイドシステムの特徴


──より中立な価値観を持つには、特定のモノを正しく理解する必要があると思います。CBDが語られる上で必ずと言っていいほど出てくるエンドカンナビノイドシステム(内因性カンナビノイド系)について、教えてください。
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人間の体は基本的に神経で調整されています。脳だけでも2000億個以上あるといわれる神経ですが、1つ1つの神経の作用はオンとオフしかありません。自動車では少しずつアクセルを踏んだり、ブレーキをきかせたりできますけど、神経はアクセル全開もしくは完全ブレーキ状態しかないのです。

──「0」か「100」なんですね。

そう。もしもアクセル全開もしくは完全ブレーキ状態だと、体にとってはよくありません。そして、その中で、内因性カンナビノイドは、その受容体を介してアクセルとブレーキの効果を少し弱める働きをするのです。
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──それはどのようにですか?

例えばなのですが、神経が100個あったとしたら、すべてオンになっているところを40個だけオフにできる効果があるのです。そうすると全体で考えると60だけオンになります。

これはあくまでも例え話なので、体の場所や、それこそ脳の場所によっても、作用の仕方や強さは変わってくるのですが。何にしてもこのように、「過剰に動いてしまう神経を抑えて、動きを正常な範囲に整えてくれる」のが「エンドカンナビノイドシステム」です。

──非常に分かりやすいご説明、ありがとうございます。これは個人的な興味ですが、CBDが細胞の中に入っていく研究はされているのですか?

内因性カンナビノイドを含むカンナビノイド類が細胞に入る様子はかなり把握できています。

ペプチドやたんぱく質などは水に溶けます。このような物質は血液に乗って体内に取り込まれやすいように思いますが、実は細胞そのものにはとても入りづらくなっています。というのも、細胞の壁は脂質、つまり油の膜でできているので、、細胞に入ろうとしても、どうしても弾かれてしまうのです。だから、たんぱく質などは、別のたんぱく質によってその油の膜を貫通するように作られた穴(チャネル)を通って細胞に入っていきます。

これが内因性カンナビノイド、あるいはCBDやTHCといった植物性カンナビノイドだとどうなるのか? カンナビノイドは疎水性が極めて強く、水にあまり溶けません。オイリーなので細胞の周りの油の膜に邪魔されること無く、しみ込むように直接入ることができるのです。

──そうなんですね。

このために、エンドカンナビノイドシステムは逆行性に神経を調節することができます。

本来だったら神経伝達はある一定方向にしかいけません。動きが決まっているのにもかかわらず、エンドカンナビノイドは受け手側で作られて、その流れを逆行できます。このことで、上流で何らかの異常が起きていることを下流で検知した場合、エンドカンナビノイドシステムを介して上流の異常を止める、ということが可能になります。これはエンドカンナビノイドシステム最大の特徴の1つです。
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文=柴田耕佑

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