NTTが今レースで提供したサービスは2つ。
1. INDYCAR Data Insights:各種センサーからのデータに基づいたレース情報をファンにリアルタイムで提供
①レース戦略、順位予想、ピットストップ影響等の予測・分析
②TV放送局へのデータ流通によるファンへのリアルタイム情報提供
③予測情報は、Twitterによる配信も実施
2. NTT Smart Venue:リアルタイムな会場混雑状況の見える化、予測
①会場内設置のカメラ映像解析による人流データ分析
②チケット改札データの分析による入場者数の分析
③モバイルアプリを通じた来場者への通知
「NTTは必要な存在」
コロナ禍、2020年のインディは無観客開催。2021年は40%の制限により観客数が13万人だったが、今年はそれが撤廃され30万人以上が押し寄せた。大観衆が安全にスムーズに入退場できるよう、これらソリューションは大いに役立った。
こうした取り組みについて、元F1ドライバーでもあり、インディカーの名門ペンスキー・レーシングも傘下に収めるペンスキー・コーポレーションのロジャー・ペンスキー会長は「データが重要な今、インディカーの将来のためにもNTTは我々に必要です。こうした新しい潮流は、(モータースポーツと)ファンとのエンゲージメントを新しい方向に導くでしょう」とコメント。
NTTグローバルビジネス推進室の栢哲之(かや・のりゆき)担当部長は今回の取り組みの将来について次のように語った。
「サーキットに入ってからお帰りになるまで、すべての観戦体験を豊かにすることが目標です。こうしたリアル観戦がメタバース空間でも実現できないかと、夢見ています」
私自身、NTTドコモ時代には三重県の鈴鹿サーキットで支社メンバーなどと「スマートサーキット」の実現を試みた。しかし得意の通信インフラが敷設されたに留まり、少々落胆した記憶がある。現在は、スーパーフォーミュラの車載カメラもライブ配信可能となったようだが、インディアナポリスでの取り組みが早期に鈴鹿や富士スピードウェイに着地しないものかと心待ちにしている。
NTTグループは2018年、ネバタ州ラスベガス市とスマートシティ推進について合意。同市では2017年に58人の死者を出す「銃乱射事件」が発生。全米の乱射事件の中で死者数が最多となった衝撃ゆえ、「治安に対する意識が高く、NTTが取得したデータなどを警察や消防に提供し街の安全確保に活用されている」と栢担当部長は語る。今回のインディにおける各ソリューションの具現化は、ラスベガスでの取り組みをフィードバックしたことによるものだ。
NTTの「スマートワールド」は、こうして海外に先行している。閉塞感あふれる日本国内でもスマート化が早期に実現されないものかと、勝手に胸を踊らせてしまう。日本を代表する企業としてNTTには、ぜひこうしたワクワクさせるユーザー体験を、次々と世の中に送り出して欲しい。