複数の個別実例の実現に向け動き出すなか、インディの会場、インディアナポリス・モータースピードウェイに「スマートサーキット」を具現化した。
現地時間5月29日に行われたインディ500では、昨年と今シーズンのレースで収集したデータと、レース中のマシンから集めたデータを活用。データ分析、AI、デジタルツイン(物理空間の情報を仮想空間に移管し、そこでリアル空間を再現する技術)などを用い、サーキットにいるファンのみならず、中継を視聴している世界中のモータースポーツ・ファンに新たな体験価値を発信した。
ただ、観戦経験のある方ならおわかりだろうが、レース中に何が置きているかを把握するのはスタンドに座ったままでは困難だ。場内実況は完全屋外ゆえ、聞き取りづらく歓声にかき消される。順位、走行データなどをリアルタイムで知るには、実は中継放送が適しているというケースも多々。
4周以内にオーバーテイクの機会があると示すレース予測(提供=NTT)
こうした状況を改善したのが、NTTのテクノロジーだ。
80億以上のデータで高度な予測可能に
インディ500は200周、その名の通り500マイルを競うインディカー・シリーズで最長のレース。レース中、マシンに搭載された140以上のセンサーが80億以上のデータを収集しそれらをデジタルツインに入力。NTTは過去の走行性能とリアルタイムの条件に基づき、AIと予測分析を活用することで、高精度なレース戦略予測を可能にした。
コース上の事態を常に把握し、これまでチーム・エンジニアしか知ることができなかったデータによりレース戦略の予測さえもサーキットの観客へと提供に至った。
以下が、実際に提供した項目。
・レース戦略とその予測
・オーバーテイク(追い越し)とポジション争いの行方
・ピットストップ(タイヤ交換や燃料補給などを行うこと)のレースへの影響
・燃料残量やタイヤ摩耗の影響
給油やタイヤ交換を行うピットイン時間を比較。左が優勢の状況(提供=NTT)
これはオーバーテイクのタイミングを予測するもので中継のカメラワークなどにも活用されたという。さらに観衆にとっては、これまでは放送でしか知り得えなかったデータや予測を、公式ツイッターやアプリを介し、サーキットにいながらにして手にすることができるようになったわけだ。