星野:フラットな組織文化だからというのもありますが、あまり私の意見を気にしていません。私たちにとって、ホテルは舞台で、その上で演じるのはスタッフです。そこで、演目を決めてどんなことをしていこうかと考えるプロセスが開業時から始まりますが、自分達が考えて作っていくということがすごく大事です。その自由度があることが、大切なのかなと。
ユニフォームもそうですが、それ以外のサービス、例えば料理、一つ一つのこだわりも、開業してからどんどん進化するところが星野リゾートの特徴だと思います。
篠原:このユニフォームは動きやすいようにパンツスタイルなんですけど、下の裾をまくると柄が見えるようにとか、着る人がアレンジできるようにしています。これも、スタッフの皆さんが生き生きされていたところにインスパイアされました。
今のモノづくりに欠かせないSDGsも配慮したいなと思って、男女問わずに着られるようなオーバーサイズにして、大量生産しすぎないようにサイズもSML展開に絞りました。夏場も快適にいられるようにスポーツウェアの素材を選んでいます。
星野:とにかく仕事がしやすく、楽な感じがスタッフにとって一番嬉しいですね。これこそ、ユニフォーム専門店やホテルのデザインを作っている人にはできない発想。伝統的なホテルマンはきちっとしていて、洗練さを感じますが、少し堅苦しい場合もあります。
もう一つ大事な要素は、スタッフが着ていてプライドを感じられるかということ。これらは職場の満足度にも影響していると思います。
篠原:私がデザインするときにすごく気を付けているのが、自分がお金を出して買えるかどうか。自分の部屋に飾れるか、自分が着られるかっていうことを考えてデザインするようにしてるんです。
この制服に関しては、大阪らしく派手にというオファーはあったんですけど、派手っていうのはいくらでもできる。だけどそこにラグジュアリーさを持たせたり、洗練もさせたい。そのために、紺の濃度を微調整したり、ピンのドットの線をできるだけ繊細になどディテールにこだわりました。
さっきのプライドの話でいうと、「自分が毎日着るなら」と毎日毎日考えて、「シンプルなのには意味があります」と胸を張って説明できるものになったんです。そしてプレゼンをしたときに、建築家の東利恵さんが白と紺の色選びを気に入り、ランドスケープ・アーキテクトの長谷川浩己さんも風化しないデザインだと言ってくださって。すごく自信になりましたし、思いを汲み取ってくれたチームが素敵だなと思いました。
星野:その二人の意見が合うことは滅多にない、すごいことです。二人とも普段は厳しくて、絶対にお世辞を言ったりするような人ではないし、お互いの意見がなかなか合わないこともあります。それが二人揃っていいと言ったというのは前代未聞の話ですね。
商売をしていらっしゃる方が地域の文化を作り上げているので、街の中にあるもの一つ一つが魅力になっています。このピンドットのデザインは、とてもOMOのコンセプトにあっている、私たちの腑に落ちるデザインでした。