星野:そうなんですよ。東京に来る人も大阪に行く人も多いし、札幌、函館、金沢、福岡、どこもすごい観光客の数です。観光の会社である星野リゾートとしては、やはり都市を訪れるお客さまに向けてもサービスを提供したい。
そういう意味ではもちろん東京も大事ですが、大阪は非常に重要。世界中から大阪にいらっしゃいますから。東京とは違った良さがあります。大阪に限らず、日本中の地方都市を含めた都市でOMOブランドを展開していこうと考えています。
OMO7大阪の外観。ホテル棟の目の前には、宿泊者と街がつながるガーデンエリア「みやぐりん」が広がる
篠原:大阪に着目してからどれくらいの期間がかったんですか?
星野:大体、完成まで5年ぐらいです。企画や、周りの方々とのディスカション、自治体との調整などさまざまな段階を経ていると、7年、場合によってはそれ以上かかるケースもあります。
OMO7大阪は、新今宮という今まであまり注目されてこなかったエリアに建てましたが、新今宮周辺のディープな大阪文化は、観光に向いていると思っています。
ビジネス客も都市に行きますが、ビジネス客と観光客は、全然違ったものを求めています。今まで、都市型ホテルはどちらかというと出張などのビジネス客の方を向いていました。例えば大阪であればオフィスが多い梅田駅周辺にホテルが多かったのですが、観光客の視点は全然違い、ローカルな人たちが営んでいるお店やバーなどに触れられるエリアのほうが魅力的だと感じます。
篠原:そのOMO7大阪のスタッフユニフォームを、私がデザインさせていただきました。
星野:これも長い月日をかけてデザインいただき、感謝しております。
ユニフォームはTシャツ、パンツ、ジャケットのほかバッグやキャップなどの小物も揃う(Photo:Takakazu Aoyama)
篠原:お話をいただいたのが2021年3月くらいで、コンペだったんですよね。私たちは普段コンペに積極的ではないのですが、今回は挑戦すべきプロジェクトだったと感じたので会社一丸となって臨もうと、プレゼンまでの1カ月間はそれにかかりきりで取り組みました。コンセプト作りから生産管理までというのはなかなか大変な体験だったんですけど、ご覧になっていかがでしたか?
星野:私が篠原さんに期待していた、まさに伝統的なホテルマンの制服とは全然違うものだと感じます。ホテルマンはこうあるべき、のような常識を超えているデザインになりましたし、ジェンダーレスなど、これからの価値観が入っているのもいいですね。私たちとしては120%の仕上がりです。
篠原:感激です。このデザインをつくるにあたって、まずOMO7とはどんなホテルで、どんなサービスがあって、私たちがどんな気持ちになる場所だろうって考え、他のホテルと差別化できるところはどこかポジショニングしていったんです。調べていくと、ファミリーでも楽しめて、カジュアルすぎずラグジュアリーな部分もあって……“OMOレンジャー”という、周辺の観光案内をするガイドサービスもされているんですよね。
この「街を楽しんでもらおう」というサービスを、可視化してデザインすればいいんじゃないかと思って、地図上のお気に入りの場所に、ピンを置いていくイメージで、それをドット柄と掛け合わせてポップなテキスタイルにしました。ホテルのアイデンティティを理解することで、導かれるようにデザインが浮かび上がってきたんです。
(Photo:Takakazu Aoyama)
そして、現場のスタッフさんとディスカッションしていて、スタッフさんと星野さんの距離が近いなというのが印象的でした。