松田:僕も尾州ウール産地とはもうファミリーのような感覚で、親しみを感じます。ヘラルボニーは2018年に創業しましたが、その前に福祉施設でつくられた革細工がバザーや道の駅などの販売所で300円、500円で売られているのを見てショックでした。それはセンスがないから安いのではなく、プロデュースされていないから。アートや福祉などを抜きにしても、パッと見て「素敵」と思えるものがあれば、それに見合った金額を払うと思います。
岩田:尾州ウールの産地もコロナ禍の大打撃を受け、今でもその影響はゼロではありません。多くの企業の売り上げが半減し、直感的に近い将来、共倒れになると感じました。1社、2社の話ではありません。すると、長期的にみれば産地のサステナビリティが維持できない。そこで思い切って自ら心を開いて、尾州ウール産地の他の企業の皆さんに声をかけて昨年初めて「ひつじサミット尾州」を開きました。
ヘラルボニーの皆さんも来てくれましたが、プレ開催と本開催を実施し、オンライン参加者も含めて1万5000人が参加し、大盛況でした。「サステナブルエンターテインメント」と題してオープンファクトリーや羊と触れ合うイベントなどを分散開催しましたが、想像以上に工場で働く人たちが誇りに感じたようです。
松田:僕はカーペットを手がける企業の工場見学に行きましたが、ご高齢の職員の方が「この水に手を入れてみてください。温かくなってくるんですよ」と言って、参加者が手をつけて驚いていたりして、工場見学自体が本当にエンターテインメントになっていたんです。僕たちもアウトサイダーアートを手がける福祉施設や美術館などを紹介するツーリズムをやってみたいと思いました。「ヘラルボニーサミット」という名前で(笑)。
岩田:ぜひご一緒したいですね。僕たちは羊にまつわる産業が縦軸で、尾州という産地が横軸だと考えています。さらに異分野である福祉やアート、他産地との連携も深めていきたいです。
例えば、かすり染という技術で、虹色に糸を染める会社が尾州にはあるんですよ。糸から「ヘラルボニー色」をつくるのも面白いと思う。そこに連れて行きたいな。うちもジャカード織りが得意なのでまたコラボしたいですし。僕がガイドをやるのでぜひ参加してください。産地で共創がたくさん生まれるような場づくりを企んでいます。
松田:面白いです。ヘラルボニーは今年からファッションだけでなく、衣食住を彩るライフスタイルブランドへと事業を拡張していきます。これからも産地とのコラボはどんどんやっていきたいですね。
佐々木:これから産地もブランディングしていくことが本当に重要だと思います。競争ではなく共創の社会をつくっていく。それが持続可能な産業と消費につながり、徐々に社会を変えていくのだろうと感じます。